北中通りの風雲児、藪そばの乱が再来!!!

高円寺北中通り商店街の長老格の筆頭、藪そば店主の通称やぶじい(86)がまた炸裂!

いつも通りリサイクルショップの素人の乱5号店で店番をしていると、突如えらい剣幕でやぶじいが乗り込んできた!!! 「おまえねえ! フラッグはやるの? やらないの?」と、問い詰めてくる!! しまった、不意を突かれた!! なんのことかよくわからない! う〜ん、これはまずいパターンだ。

「なんでしたっけ」と聞くと、「ばかやろう、北中夜市だよ! 夜市のフラッグを早く作れって言ってんだよ」とのこと。立て続けに「モタモタしてんじゃねえってんだよ、まったくガキどもは」とご立腹だ。どうやら商店街の街頭についている商店街の旗を北中夜市バージョンで作ろうというやぶじいの案を強行しに入ってるようだ。で、俺にやれという。

勝手にやるわけにもいかないので「わかりました、じゃあ商店街の役員会にかけてから進めますよ」というと「バカヤロー、トロい! 俺がやれって言ってんだからサッサとやれって言ってんだよ! モタモタシテンジャネー!!!」と、怒りが増幅!! やばいやばい! とりあえず「いや〜、さすが藪さんの決断力はすごいですね! こりゃ、かなわないな〜」などと言って喜ばせて時間を稼ぐ。そう、こういう時は褒めるに限る。

う〜ん、しかし、これはやはりやばいパターンだ。会議を通してると「モタモタしてんな」とぶっ飛ばされ、会議を待たずにやると「勝手に何やってんだ」とぶっ飛ばされる。ほとんどジャイアンだ。これはまずい、とりあえずは現会長の床屋さんに相談してみるしかない!

しかし、それをも予測しているかのように、矢継ぎ早に攻撃の手は緩まない。そんな相談するなどという猶予を与えないスピード感がやぶじいの戦闘スタイルで、勝手に武勇伝を語り出し、「そういやあ◯◯のヤツどうしようもないから、どやしつけてきたところだ!」とのこと。おお、すでに他の北中の幹部を始末してきたらしい。やぶじい、拳を作って見せて「あいつ役立たずだから、胸ぐら掴んで、このやろう、ノロノロしてやがると殴るぞこのやろうって言ってやったんだよ」とのこと。おおー、さすが86歳、現代ではやっちゃいけないような禁じ手を次々と繰り出す。しかも文句言っただけかと思ったら、人の店に殴り込んで、そこの店主の胸ぐら掴んで殴る寸前に! 「ええ〜、藪さん大丈夫ですかそんなことして〜?」と聞くと、「大丈夫だよ、逃げやがった」だって。そりゃそうだ。誰だって逃げる。しかしこれはいよいよやばい、すでに1人屠ってからこっちにきてるのか! 例によって虫の居所が悪い時は、戦後の不良少年のように街を徘徊して目立ったやつを潰して回る、いつものあれだ! こりゃ、やべー!!

さらに怒りは治らず、商店街に対する論をぶちまけ始める。「まったくどいつもこいつも、テメエの店のことばかりやりやがって。ここでみんなが店をやってられるのは商店会あってのことじゃねえか。商店会がなかったら個人店なんてやってけないよ? だから商店街のために動かなきゃダメなんだよ。やらないんだった俺が店ぶっ潰してやる!」という。かなり納得できそうで、最後が強引な展開は毎度の通り。「俺が本気出したら、オメーらクソガキどもなんか生きていけないよ? 死んじゃうよ?」という! ちなみにこれ、文字で読むとものすごい感じ悪い人みたいだけど、実はそうでもない。この世代の人たちは、基本的に素でこういう悪態をつくので、慣れてるとどうってことはない。ただ、逆らったら死ぬことだけは確かだ。

「で、フラッグはやるの? やらないの?」「やります!」

やるというとすぐご機嫌になり、「そうだよ、さっさとやるんだよ。たのんだよ、まったくどいうつもこいつも…」 あぶないあぶない。殺されるところだった〜!!

しかし、やぶじいは長年にわたり商店会長を務めてきて、商店街に対する思い入れが半端じゃないんだろう。時々大騒ぎになったりはするものの、こういうとんでもない勢いの長老世代がいたからこそ古い町や商店街が残ってきたんだろう。なるほど、年老いても生涯現役という気持ちのなせる技かもしれない。やぶじいは本当にこの商店街を愛しているに違いない。なるほど、面倒なこともあるけど、こういう老人あっての商店街かもしれないな〜 などと思っていると、やぶじい帰り際に一言。

「ほら、最近かウチのかあちゃん入院したろ? することねーんだよ」

おい〜〜〜〜! コラー! カミさんが入院して一人だからすることなくなって、商店街をウロウロしてザコを倒して歩いてるだけだったのか〜〜〜

おーい、藪のおばちゃん、早く病気治して帰ってきて〜!!!