まだ読んでない書評『どうげんぼうずという仕事』

またとんでもない本が出たので、素人の乱5号店に仕入れてしまった〜! と言うわけで、例によって読む前に紹介。書評っていうと、当たり前だけど基本的には本の内容を紹介して、あの部分がどうこう、読みどころはここがポイント、あのくだりが良かったイマイチだった、などと評するのが基本。
…なんだけど、本って意外と手に取るまでの経緯がすごく重要だったりする。そもそも毎日のようにとんでもない量の新刊本が出る中、わざわざその本にたどり着くってなかなかの事態。音楽とかもそうだけど、やっぱり手に取るまでの経緯が大事で、誰にオススメされたとか、どのシチュエーションで手にしたかとかかなり重要だったりする。そんなこともあって、読む直前までの事を書くの書評(っていうか書評じゃねーな、それ!)って、なんか好きなんだよね〜

ともあれ、読む前に仕入れることを決めたのがこの本『どうげんぼうずという仕事』
ジャーン!

「どうげんぼうず」っていうのは中野・鍋屋横丁にあるラーメン屋の名前で、そこの大将のチカヒロ氏を書いたドキュメンタリー本だ。で、このラーメン屋がただもんじゃなくて閻魔大王みたいな店。差別主義者がいたら懲らしめに行ったり、パレスチナで虐殺が起こればイスラエル大使館に文句言いに行ったりと、悪を斬って斬って斬りまくる、完全に時代劇のようなことになっていて頼もしい店。そんなわけで、店内にもはびこる悪を懲らしめる宣言のステッカーで埋め尽くされており、自民党やら差別思想の持ち主なんかからしたら、店に入った瞬間に虫の息必至のようなオーラ全開で最高。

そういえば、初めてどうげんぼうずに行ったのは5年ぐらい前だったか。当時うちのリサイクルショップ(素人の乱5号店)でバイトしていたアマネちゃんという子が、かつてSEALDsの高校生版みたいなところ(たけし軍団セピアみたいなもの)にいたこともあり、その繋がりでなのかチカヒロ大将とは親しかったみたいで、仕事の外回りの途中にそのアマネちゃんと昼ごはん食べようってなった時、「鍋屋横丁にめちゃくちゃ戦ってるとんでもないラーメン屋あるから行きましょうよ」というので、断りきれず、斬られたらどうしようと恐る恐る行ったのが確か初回。意外にも殺されることもなく、それどころかやたらいい人で、しかもラーメンもやたら美味かったこともあり、それ以降は中野方面に仕事で行くついでに行くようになった。

そしてこの度、やはり同じく「こりゃただ事じゃねえ〜!」と飛び上がったと思われる川口さんというライターさんが、勢い余って書籍化に乗り出した模様。その勢いで来るんだったら、こりゃ、こっちもラーメン食ってる手前、ひと肌脱ぐしかないじゃねえか。よっしゃ、仕入れるぞ〜
そんな流れで、うちの店でも取り扱わせてもらうことに。巷にはいろんないい本があると思うけど、どんなに正しいことが書いてあったり、素晴らしい本だったりしても、普段はなかなか「じゃあうちの店で置きますよ」とはならないんだけど、ラーメン食べに行ってるとなると話は違う。そういう日常生活の中でのつながりって自分の中ではものすごく大事なことなので、つべこべ言わずに「置きましょう!」となる。ちなみに、素人の乱5号店で取り扱っているいろんな本やバンドのCDなど全部そんな感じで、ちゃんと人としての繋がりがあった上で、信頼できる人のものだけを取り扱うことにしている。

さて。繋がりの問題だけじゃなくて、もうひとつ店で取り扱いたくなる理由がある。チカヒロ氏が個人商店主だってこと。しかも誰が来るかわからない不特定多数を相手にした商売のラーメン屋。この本をパラパラっとめくってみても、近所のガキンチョの話や老人の話が各所に目に付く(まだ読んでないけど)。こういうのって超重要なんだよね〜。うちの店もリサイクルショップってこともあり、もはや誰が来るかわからない。用もないのに世間話しに来る現れる近所のじいさんばあさんやら、個人的な困りごとの相談にやってくる若い奴らなど、リサイクルにはおおよそ関係のない来客者も続々やってくる。こういう街の中で近所の人たちと生きることって、自分もすごく重要だと思ってるしね〜。ものを言う商売人の存在っていざって時にも超大事。

そんなことで仕入れることになり、早速納品しにきてもらったんだけど、パラパラっとめくってみて、ふと目についたのがこの写真。なに〜! これ、あんただったのか〜!!!!!笑

そう、2011年当時、高円寺でも原発反対の「原発やめろデモ!!!!!」というのをやり始めてたんだけど、勢いで始めたものの結構人が集まるようになったので、主催側でよく話してた、…というか自分が常に主張してたのが“いかに運動を組織化させないか”ってこと。最初は勢いと瞬発力でバーっと広がるけど、どうしてもメインで動く人間が固定化してきたり、中心ができてきたり、運動を起こしてるグループが団体のような雰囲気になって来がちで、徐々に呼びかける側と参加する側に別れていく感じ。そうなってくると、世間的には「あ、この辺のこんな感じの人たちが反原発運動やってるのね」っていう空気感が出てきがちで、そうなると日本人特有の後乗りするのを躊躇する謎の風潮なんかも相まって、そうなった瞬間に運動って力を失ってしまう。なので、敵に姿を見せてはいけない、ってことを心がけてた。あ、タイミング的にいいので一応言っとくと、ここでいう“敵”って、原発再稼働をした野田政権ね(俺は今でも野田を許してない笑)。要するに、当時求めてたのは、いろんなところでいろんな奴が「ふざけんなー」と怒りはじめて収拾つかない感じ。これ、時の権力者からしたら、一番怖い。仮にイメージに過ぎないとしても誰かが号令を出してる雰囲気になってしまったら、そこが狙われて終わりなので、よほどのとんでもない革命運動でもない限りは権力者に軍配が上がりがちだ。なので、どこで誰がどう目論んでるのかわからないぐらい各地でいろんな奴らが反旗を翻しまくり、権力者からしたら「オマエら、一体誰なんだ〜!」と常に不気味がる感じがいい。で、さらに「なに〜、こことここがなんで繋がってるんだよ〜!」みたいな驚きがあっちこっちで見られたり、とりあえず不気味がらせたかった。現代社会のように分断されまくった民衆にはこの作戦が最強で、権力者をエンドレスのもぐら叩き状態に陥らせること。この作戦で一挙に畳み掛けよう〜、なんて当時盛り上がってたけど、そうなってくるともはや時間との戦いで、結局時間の流れには勝てず、世間的には徐々に風化していってデモは各地で盛り上がってるものの、運動やる人とやらない人の溝がどんどんと広がっていった感じ。あれ残念だったな〜〜〜〜〜

あれ、なんの話だっけ。…あ、しまった。本の紹介だった!

で、話を戻すと、上の写真。当時、そんな空気感の中でどこからともなくその写真が回ってきた。謎の兄ちゃんが国会の目の前でギター持ってなんかやってる。うわ〜、誰なんだこれ〜、最高じゃねーか! 完全にもぐら叩きが始まった!!!! と、勇気をもらった覚えがある。

そしてその後、そんな写真のことも忘れてて、たまたまラーメン屋に行くようになって、本が出るというので仕入れて、パラってめくってみたらあの写真。コンチキショー、世の中どうなってんだ!笑 

ともかく、そんなこんなで鍋屋横丁のラーメン店。個人店、しかもうかうかしてると物を言い出し始める個人店って完全にさっきの話の“もぐら”状態。普段は寿司握ってたり提灯作ってたり水道の修理してたり中古の洗濯機掃除してたり(←これはうち)すると思いきや、いきなりデモを起こしたりする感じで、おまけに稼ぎはテメエで作ってるのでかなり無敵。それに、個人店って人の生き様の具現なので、見てても面白い。昭和の田舎の成金みたいな発想のバカみたいな再開発のおかげで日本中から個人店が減っていく中、どうげんぼうずみたいな生き様や、普通の賃労働って意味じゃない“仕事”(意味としては必殺仕事人の“仕事”に近い)に遭遇することってすごく重要。しかも、この本は、肝心のラーメン作りの話から始まってるのがまたいい。
ってわけで、インテリや学者の正義の本でもなく、大きな組織や団体の幹部の提言本でもなく、個人店主の生き様の本。こう言う本って結構レアなので、ぜひ読んでほしい。

ってことで、素人の乱5号店に置いてあるので、さあ買った買った〜。あ、でも高円寺来るなら隣の鍋横行ってラーメン食いがてら直接買う方がいいかも。ま、どっちでもいいや!
とりあえず読むしかない!!!