中四国巡業⑧番外編 大阪&京都秘密会議

さて、『世界マヌケ反乱の手引書・増補版』(文庫版)の中国四国ドサまわり巡業、呉・広島から始まり、2週間以上かけて昨晩の鳥取にて無事終了。いや〜、ほんと見事に各地に面白い人がいるし、それぞれの場所で新しいふざけた場所(バカセンター)の情報教えてもらえるし、やはり各地を実際に回るのって重要だな〜
しかも、各地に必ず、昔高円寺に住んでてイベント参加したことある人や、「ラジオ聞いてます!」と異様に情報に詳しい人、実は大学が同じで当時のこと知ってる人などなど、東京発の火種がいろんなところにものすごく散らばってる。それもそのはず、東京にも地方の各都市からいろんな奴が引っ越してきたりして、各地の情報を教えてくれている。確かに、同じぐらい行き来があってもおかしくない。こういう実感って、やはり現地に行かないとわからないのが、各地を回る醍醐味。いやー、またこれからも各地へ遊びに行きたいな〜

で、いよいよ東京へ向かうわけだけど、そうやすやすと帰れないのは想定内。今回は全て中四国でのイベントってことで、近畿圏の人たちから「関西全無視やんけ。どないなってんねん」と苦情多数。やむなく倉敷や津山のイベントなどにわざわざ関西から来てくれた人もいたぐらいだった。やべ〜
危険なので関西を避けて北陸−新潟経由で帰ろうかと思ったけど雪に阻まれて無理。四国に戻って船で帰ろうかとも思ったけど船賃が高すぎてこちらも無理。というわけで関西へ〜

というわけでまずは大阪。いや〜、こういう感じの高架下のボロい飲食街がどこにいってもまだたくさん残ってるところが大阪の安心するところ。
大阪は特に告知したわけでもないし、イベントやるわけでもない。ちょっと重要人物との密談。極秘で事を運ばないといけないので会談場所は極秘中の極秘で、大阪郊外の雑踏の中に入り、指定の中華料理店に。

重要会議というのはウソで、大阪の盟友にして、最近「マヌケ出版社」という世の中ナメ過ぎの出版社を立ち上げた、もりっしーこと通天閣盛男。最近、調子狂い気味だったとのことで、酒は百薬の長作戦に誘う。そして、パンを大量に作って革命を起こそうと目論んでいる謎のパン職人のインテリパンク氏が登場。何を隠そう、このインテリパンク氏はパン職人の傍ら、本のデザインの仕事もしており、どうやら「マヌケ出版社」による次なるとんでもない書籍の計画の作戦を練っていた。いったいどんなシロモノが登場するのかは乞うご期待。どうやらその計画は来年には実行されるとのこと。くわばらくわばら。
さらに、マヌケゲストハウスに京都大使として常駐してくれている涼子さんも現れて密議に参加。涼子さん、京都−高円寺を行ったり来たりしていて、完全に参勤交代状態なんだが、今は京都で在番中とのことで飲みにやって来た。
さらには、いまもりっしーも関わっているというモモの家という謎のスペースに移動して、来年の計画を練る。

続いて翌日は京都へ。
実は倉敷のイベントの日、京都から学生たちが来てくれていたんだけど、その日の打ち上げの時、「京都にも来てくださいよ〜!」と誘われたので、「いいよ」とふたつ返事。飲みの場で適当に返事したものの、最近の学生はよくできていて、翌日LINEで「おーい、覚えてるか〜?」と、確認あり。さすがだ!
というわけで、京都へ。こちらも特にイベントではなく単に飲みに行く。場所は中華そばの「みみお」という店。ここは京大吉田寮のすぐ近くにあるので、吉田寮関係者をはじめ京大界隈の人たちがよく集っている店で、店主の訪米さんもよく高円寺に遊びに来てくれる。

ただの飲み会。
友達の友達などが集まり、わけわからないことに。さらには、定休日に貸切営業で開けてもらったにも関わらず、開いてると間違った一見さんなども入ってきていよいよカオスに!!
脈絡ない飲み会だけど、結構面白い人たちが集っていて、いい交流ができた。来年には京大生たちが大挙して高円寺に飲みにやってきて、高円寺「なんとかBAR」で1日店主をやるという計画も決まり、京都へも再度来る約束をさせられるなど、今後の謎の展開もいろいろ確定。飲み会恐るべし!

さて、そんなわけで、大阪・京都の番外編も含め、ようやく中四国巡業も無事終了〜。翌々日の朝には東京に戻り、なんと17泊18日の全行程が完了。いや〜、長かったけど、これ全然いけるね〜。ほとんど全部遊んでるようなもんだから疲れもゼロ。高円寺の店があるからこれ以上の期間は厳しいかもしれないけど、1ヶ月でも2ヶ月でも1年でもずっと回ってられそう。

しかし、いろんな場所を回るのは本当に面白い。そこのスペースややってる人によって集まる人たちも変わってくるし、街の規模や雰囲気によっても違う。そんな各地に行くたびに、現地の友達がやたらできまくるの最高すぎる。いや〜、今回できた膨大な人数の新たな友達たちのおかげでまたさらにとんでもない事態が発生することも間違いなし。実際、東京に帰った直後に、広島のイベントで物販出していた絶滅危惧種も高円寺に現れるし、「鳥取汽水空港のイベントにいましたよ!」なんて人が店に遊びにきてくれたりもした。早い!!! そう、火種はすでにばら撒かれた! 来年からの各地でのマヌケな奴らの展開が楽しみ!

というわけで、めでたし、めでたし。
では諸君、またの機会に!

中四国巡業・ドサまわりツアー  完

中四国巡業⑦ 千秋楽・鳥取汽水空港 

すでに2週間以上にわたってウロチョロしてきた『世界マヌケ反乱の手引書』(文庫版)の中四国巡業もいよいよ千秋楽を迎えようとしている。そう、最終日は伝説のスポット、鳥取・汽水空港。店主のモリくんとは長年の友達で東京ほかいろんなところで会ってはいたんだけど、なんだかんだと店には行ったことがなかったので、今回は楽しみ。やっと汽水空港に行ける〜

ただ、それを阻むのが津山の瓶チュー。そして打ち上げから始まる津山方式。翌朝、完全に二日酔いで、これはヤバい。いや〜、瓶チュー効くな〜。迂闊だった〜
ともかく、昼前には出発して鳥取方面に向かう。が、しばらく運転して気づくが、どう考えても酒が残っていて、完全に飲酒運転状態。これは死ぬと思い、ちょうどあった道の駅に入った瞬間に寝る。で、起きたらすでに夕方近くになってる。やべー! で、ちょうどモリくんから連絡が来ていて「5時ぐらいまでに来といてほしい」とのこと。おお、今から行けば5時前には着きそうなので、ちょうどいい!
ということで、早速出発。するとずっと坂道を登ってる。なんだなんだ、ずいぶん道が険しいじゃねえか、聞いてねえ。よくよく考えたら、車やらバイクなんかで来たことは何度もあるけど、いつも東西の道を通ってただけで、縦に中国縦断するの初めてかも。ぬかった!

道すがら急に寒くなってきて、街道沿いの温度計も「0度」の表示。嫌な予感しかしなかったんだけど、案の定、みぞれ混じりの雨が降り始め、あっという間に大粒の雪が降ってくる。そして路肩にはところどころ積もった雪。こちとら都内を走る軽商用車なので、一点の迷いもない二駆と動かざること山のごとしのノーマルタイヤ。雪の路面に対する恐怖心はそんじょそこらの雪国の奴らの比ではない。すかさず空き地に車を停めて地図を見ると、峠まではあと数キロ。峠を越えるとあとは下りなので高度も下がるので、おそらく雪はこの一帯だけだ。これはイチかバチかで行けるか!? ただ、峠を越えたあたりの道は、高い山に囲まれ、高低差があって大雪が降りやすい典型的な地形。峠の先の下る途中の集落の天気を見てみると(上の画像)、とんでもない大雪になってる。ましてや、下り坂の峠の雪道で夏タイヤ軽商用バン二駆は絶対死ぬ。しかも、まんまと東京のナンバーなので、そんな車で一人で勝手にスピンして路肩に頭から突っ込んでる醜態なんか晒そうもんなら、地元民たちから「まったく、これだから世間知らずの東京もんは」と、とんだ笑い者だ。ぐぬぬ〜、しかしこういう時は気合と根性があれば何事も突破できると、90年代に大学の先輩たちからはキツく教えられてきている。よ〜し、ここは気合と根性で死んでいった先輩たちの仇を討つ時がついにやってきた! よっしゃ、決死の覚悟で突破するか〜!!!

…と、思ったけど、やっぱり危ないからやめた。野郎ども、ずらかれ!

峠から10キロほど戻り、翌日も雪に埋もれることはないあたりに車を停める。鳥取まで距離としてはそこまで遠くないので、電車かバスで行こうと思ったが、そんなものはない。完全に山の中。しまった、騙された!
もう観念して、汽水空港のモリくんに電話して万事休すの旨を伝えると、「今から未曾有のヒマ人が車で迎えに行く!」とのこと。なんと!

汽水空港からは車で約40分。いや〜、申し訳ねえ〜
救いに来てくれたのは、なんと高知から来ていたヤマジさんという人。上の写真は、例の峠を越えた先の下り道。いや〜、こんなところ走ったら即死だった〜。誰だ〜、気合と根性でなんとかなるとか言ってたやつ。出てこーい!!

ま、そんなわけで、ようやくイベントの話。今回はこちら(下の画像)。

倉敷に続いてのだめ連神長さんに、東京芸大の毛利先生も交えてのトーク。各方面の特殊な専門家が作戦を練る集会。重要集会に遅刻して申し訳ない〜

約45分遅れぐらいで到着。すいませ〜ん、と入ると超満員。モリくんからは人口30人ぐらいの寒村みたいな勢いで聞いてたので、たまげる。盛り上がってるじゃねーか!!

序盤でピンチヒッター的に登場してくれていたのが、神戸に本部を置き、近年急速にその極めた道の勢力を拡大している広域廃屋組織の西村組初代組長(写真右から2番目)。今回は関東の勢力が山陰に現れることを聞きつけ、急遽神戸から一家の者とともに急行して来た。
そう、西村組の話は最近よく聞いていて、古い民家など廃屋を改造しまくってとんでもないスペースを開きまくっているという、面白すぎる軍団。いや〜、今度遊びに行ってみたい! っていうか、この日も西村組のやってることを紹介してたみたいだけど、遅刻して見損なった。チキショー、残念!

さて、トーク内容は、例によって文章化しても意味ないので割愛。鳥取と東京を繋げて何か面白いことが出来ないかって計画を練ったりして楽しかった。いや〜、いろんな案が出たけど、どれかは実現したい!

終了後、記念写真。
いつもは車で寝てたんだけど、車を謎の山中に置いて来たことをハッと思い出し、寝床がないことに気づく。ところが、この汽水空港のすぐそばで「たみ」というゲストハウスをやってる人(写真最左)がいたので、急遽チェックイン。モリくん、常々「田舎はマジで何もないですよ!」と言ってるけど、いろいろあるじゃねえか! すごい、助かった〜
ちなみに、このゲストハウス「たみ」に泊まったお客さんが、高円寺のマヌケゲストハウスに泊まりに来てくれることも多々ある。なので、お礼がてら、高円寺でも手持ち無沙汰そうにしてる海外からのお客さんなんかに「どこか別の街で面白いところはあるか?」と聞かれたら、たまに「たみ」のショップカード渡して、「ヨシ、ここへ言ってみろ!」と言ったりしてる。「トットリ? 何があるんだ?」と聞かれるが「何もないらしい! とりあえず行ってみるしかない!」とか無責任なこと言って送り出したりしてる。本当に向かったかどうかは不明。

最後に、汽水空港の壁にサインして帰ってというので、とりあえず定番の4コマ漫画。

ゲストハウス「たみ」の廊下。和室メインのいい感じのところで、高円寺の史上最低のゲストハウス=マヌケゲストハウスに泊まるより、この廊下の方が快適そうだ!

翌朝、また汽水空港に戻る。昨夜は暗闇の中かろうじて辿り着いたので、外観全く見てなかった。出ました〜、渋い!! 隣にやたらきれいな建物が建ってるのがまたいい。完全に21エモンのつづれ屋とホテル・ギャラクシー。

汽水空港↑

で、帰り際に駅前の喫茶店でモーニング。昭和レトロな喫茶店はやはり居心地がいいね〜
コーヒー飲みつつ昨日のイベントの続きのような雑談をしてると、いろんな悪知恵を働かせて切り抜ける悪だくみ作戦の一問一答集みたいな参考書テイストの本作った方がいいよ、みたいな話になり、まんまと「やりましょう!」と口車に乗せられ、安請け合い。しまった!

最も口車に乗せてくるのが、この男、ヤマジ氏。あれ、なんか聞いたことある名前だ。そう、何を隠そう、昨日の夜に雪の山奥まで迎えに来てくれた命の恩人。偉業を成し遂げた英雄なので、もう少し重宝されてもいい感じもするのだが、なぜか汽水空港ではパシリキャラが定着していて、この日はまたも山の向こうの車が立ち往生してるところまで送ってくれることに。いや〜、ありがてえ〜

と、いうわけで、前半はヒヤヒヤしつつも鳥取マヌケ作戦、無事終了〜。写真はいろいろ世話になった汽水空港のモリくんとアキナさん。
ありがとう〜、また遊びに来まーす。

中四国巡業⑥ 津山 商店街露天風呂作戦!!

岡山の次は津山。
事前に、12/6に岡山、12/8に鳥取でイベントが決まった段階で、津山の人から「時間あったら飲みに来ませんか〜?」と誘いが! しかも津山って岡山市から鳥取に行く途中にあるので、これはもう遊びに行くしかない。ということで、急遽津山もツアー日程に編入! しかも、津山ってまだ一度も行ったことのない街だから、これは嬉しい! いやー、楽しくなってきた。
学生の頃から、隙さえあればバイクで1ヶ月も2ヶ月も旅行して回ってたり、無目的に海外に行ってフラフラ長期旅行したりしていて、本来は定住が苦手な性格なんだけど、店を開いてからはどうにもこうにも土地に縛られるようになってるので、こういう何がどうなるか分からない長期移動はすごく安心する。“一寸先は闇”の状態が一番心地いい。

「ちょっと飲みに寄りまーす」というノリだったんだけど、他の都市がやたら気合い入ったフライヤーとか告知とか始まったのにつられて、津山の人たちが勢いでフライヤーまで作ってくれた! 今改めて気づいたけど、「飲んだり話したりする会」って、単なる飲み会じゃねーか笑 いや〜、すごい! ただの飲み会もフライヤーにしたらなんだかイベント感出てくる! いいねー、今度から高円寺でも事あるごとに飲み会フライヤー作ろうかな〜

会場に到着〜
ブックカフェのような店で、「喫茶 曲がり」というところ。

店内は、奥の方が喫茶+書店になってて、いいところだ〜。数人で共同経営してる方式とのこと。2階もある。古い建物いいな〜

と、思ったのも束の間。店の外では、大の大人たちが何やら訳のわからないものをせっせと準備している。この店の人もいるけど、近所の業者の人やら店の大家さんやら、いろいろ集まってる。聞けば露天風呂。なんだそりゃ〜!
なんで風呂なんか組み立ててるのか聞いてみたら、「いや〜、昼に会って話してたら、なんとなく風呂でも出そうかって話になってね〜」だって。なんだそれ、最高すぎる!!! 普通、街でばったりあったおじちゃん同士で「路上に風呂設置しよう」ってならないだろ〜。「風呂でも行くか」の間違いじゃないの!? しかもえらい時間かけて風呂設置して、ああでもないこうでもないと大騒ぎに。その熱意はいったいどこからくるんだ!! しかもよく見たら、熱源はガスじゃなくて焚き火! 写真を見ればわかるかもしれないけど、鉄パイプがグルグル巻いてあるところで焚き火やってれば、自然とお湯が流れて風呂が沸くシステム。これも近所のオヤジが作ったらしい。すげー。路上で風呂に入るための執念が凄すぎる!!! いや〜、いいね。こういう大人たちの存在って重要だ。津山恐るべし!!!!!
東京でこれができるだろうか? いや、できない! これだけ時間に余裕のある本気の大人たちはいないし、路上で焚き火不可に加え猥褻物陳列罪のおまけ付きだ。くそっ、できねえ! 負けた!!

完全に猥褻物陳列罪。
しかも、市街地のど真ん中の商店街沿い。ここで恥も外聞もなくライトアップされながら風呂に入るの最高すぎる! 通行人からしたら、普通に商店街で買い物して歩いてたら突如風呂に入ってるオヤジがいる感じ。いや〜、めちゃくちゃいいな〜、これ流行ってほしい! どこでも風呂。
風呂設置に奔走していたおっちゃんたちも「これはいいな〜!!!」と大満足の様子。

さて、着々と露天風呂作戦が進行する中、店内ではイベント(というか飲み会)が始まる。なんと、店内には屋台があり、飲み会会場はこちら。この屋台、折りたたみ式になっていて、たまに野外や他所のイベントなどの時に出動させるとのこと。おお、高円寺の移動式屋台「のんべえ号」と同じスタイル! 写真中央が今回呼んでくれた、店の運営メンバーのひとりのタカツカさん。
で、津山人たちいわく「津山では、先に打ち上げやるんですよ〜」という。ほんとか!? なんと、先に打ち上げから始まって、徐々に二次会、一次会と逆流する感じ。すごい! そういえば津山ではパンク・ハードコアシーンが結構盛んで、ライブのイベントとかもよくあるらしく、そんな時に遠方から来たバンドなんかが打ち解けるために、先に打ち上げやったりすることもあるとのこと。なるほど〜、そんな技があったのか〜! 新しい!!
ということで、津山到着早々、いきなり飲み始める。津山スタイルいいな〜、高円寺でも導入しよう。

さて、飲み始めると、遠方からわざわざ来てくれる人とか、昔高円寺に住んでたけど津山に引っ越した人など、続々と登場して面白い。しかも「飲み会」というスタイルが良くて、別に決まったスタート時間もないし、みんな一斉に来るんじゃなくて、三々五々集まってきたり帰って行ったりと流動的。決まった時間にトークがあるわけでもない。…って、そうか、ただの飲み会だった。
でも、言われてみればトークイベントとかやっても、終わった後はそのまま帰る人も多く、主催側と一部参加者で打ち上げ行く感じが多いので、参加者と話す機会が少なくて、ちょっともったいないことが多々ある。でも、このいきなり打ち上げスタイルは普通に友達になるので結構いいかも。今度から俺も打ち上げだけやるイベントやろうかな〜

完全に赤ちょうちんの屋台で飲んでるのと同じ光景。

そんな頃、店の外では湯が沸いたとオヤジたちの騒ぎ声が。急いで外へ。足湯スタイルで引き続き飲み始める。外気は3度ほどだったので、最初はやたら寒かったけど、熱々の足湯なので意外と暖まってくる。
ハタから見ると完全に謎の光景。通りがかりの若者から老人に至るまで「えっ、風呂? いいなぁ〜」なんて話しかけてくる。「いつもやってるんですか?」「いつもはやらないよ!」なんて会話が。いや、平和すぎる!

そんな感じで、ひと通り飲んだ後は、「じゃあ、打ち上げで飲みに行きましょうか」ということに。おお、打ち上げの打ち上げが始まる! いや、三次会の次の二次会か。まあ、なんでもいいや。よし、飲もう飲もう〜
で、一番津山っぽいところに連れて行ってくれるという。
で、写真のいぶし銀の居酒屋に。常連ばかりの店で、これ確かにいきなり一見では入りにくい。やった〜、これは素晴らしい。

で、何を飲もうか考えてると「津山だったら瓶チュー飲まないとダメでしょ〜」と、これを勧められる。見たことない。
とは言っても、津山の地元の会社が作ってるやつではなく、合同酒精なので全国で売ってるはずなんだけど、なぜか謎の怪奇現象で津山ばかりで異常に飲まれているという。確かに、岡山・倉敷でも見なかったし、この後に行く鳥取でも誰も知らなかった。どうなってんだ、津山!!
ええい、こうなったらヤケクソだ。郷に入っては郷に従えってことで、ひたすらこの瓶チューを連続で頼んで飲む。意外と濃い。

店内は、完全に親戚のおばちゃんの家の台所みたいな感じ。居心地良すぎる。ここなら永久に飲める。

で、打ち上げの打ち上げもぼちぼちお開きになり、そろそろ解散かと思われたけど、まだ誰か飲みに行くというので「俺も行きたい!」と、さらに飲むことに。猫目というパンクバーに。さすが津山! もう深夜2時か3時ごろだったけど、まだ飲むところがあるってのがすごい。津山の人口って10万弱ぐらいで、この規模の街だと夜11時過ぎるとどこも行き場がなくなるのがいつものパターン。経験上、だいたい20万人規模の街になってくると、深夜までやってるBARとか歓楽街の街中華なんかがちらほら出てくるイメージ。そう考えると、津山やばい!

そんなわけで、迂闊にも4時半ぐらいまで飲んでしまい、振り返ってみると津山に着いてからずっと飲んでる。いや〜、しかも連続で飲んだ瓶チューが意外とダメージもでかい。明日は鳥取だ〜。早く寝るしかない!!
ということで、津山作戦終了。初津山、やたら楽しかった!! いや〜、飲みすぎて翌日の鳥取が心配だ〜

中四国巡業⑤ 岡山、老人決死隊の登場

12月4日、高松「なタ書」の混乱を終え、また瀬戸内海を渡り岡山へ。

で、岡山駅近くの駐車場に適当に車を停めて、歩き出したところ、近くのビルから何かピンとくるものを感じ、行ってみると案の定謎の市場に迷い込む。巨大な建物の一階が碁盤の目のようになってて、市場になってる。うや〜、いい場所だ!
そういえば、広島の基町アパートの一階も同様に碁盤の目状の市場(というか商店街)みたいになってた。大阪・鶴橋駅前の市場もそうだし、東京上野の高架下も似た感じだけど、こういう市場のごちゃごちゃした感じってすごくワクワクするんだよね〜。下北沢の古い市場は再開発で壊されちゃったのが残念だし、高円寺も北口の旧市場エリアあるけど、最近あまり市場感無くなってきてる。
何がいいって、この店舗サイズ感。3坪とか5坪ぐらいの小さい店舗がギュッとひしめき合ってて、それぞれの店主が競い合いつつみんな顔見知りな活気が、客としても心地がいい。それに整然とした空間より「なんかあるんじゃねえか」感が滲み出てるのもいい。

で、よくよく見たらこれ“岡ビル”という一つの建物(上の写真は岡ビルのウェブサイトより)。でた〜、一階が市場で上が住居という定番コース。下が市場で賑わってて、上の階には市場の人や関連業者の人なんかが住んでてさらに賑わうあの感じ。最近このパターンの建物だいぶ減ってるけど、まだあったのか〜

コッソリ上の階に行ってみると、案の定、住居スペース。こんな棟が何列か並んでる。そして写真右下のトタン屋根は市場の屋根。否が応でも住民同士が顔を合わさざるを得ない構造。これ、昔は相当賑わってたに違いない!!! っていうか、自分が育った江東区の団地もこんな感じだったな〜。毎日のように見知らぬジジイとかババアにぶん殴られたり、時々仕返ししたりして、楽しかった〜
この岡ビルのサイトには過去の沿革も紹介されてたけど、やはり楽しそうだ〜

改めて思うけど、経済が頭打ちになって、さらに人とのコミュニケーションが希薄になりすぎて謎のストレス社会になってヤバいことになってる今の日本社会にこそ、こういう職住一体型の場所って大事なんだよね〜。最近も職住一体型とかなんとか言い出してるの聞くけど、オフィス棟とタワマンが一体型になったようなストレス社会の権化みたいなのばっかりで、バカじゃねーかといつも思う。そうじゃねえんだよ、そうじゃ。テメエの職住一体させてどうすんだよ、みんなの職住を一体するのが大事なんじゃねえか、べらんめえ、ちきしょう、このやろう。

で、なんと! ここの一階に貼り出されている掲示を見ると、なんとここも再開発計画で、近々取り壊されるようなことが書いてある! バカー、なんてことするんだ〜! 事情は知らないが、こういう場所の復活から、これからの未来につながることは明らか。もしこれを変なありがちなきれいな商業施設にしちゃうんだったら、日本社会の発展はまた遅れることになってしまう。いや〜、残して欲しいな〜、岡ビル。
他の場所でも、よく老朽化とかの理由でやむなく壊すみたいなことよくあるけど、それだったら全く同じ設計で新築の同じもの建てて欲しい。

あれ、だいぶ話がずれた。『世界マヌケ反乱の手引書』(文庫版)の巡業で岡山に来たんだった。岡ビルが良すぎて忘れてた!

今回は、“名前は人斬り見た目は囮”でおなじみの川上幸之介氏がひと肌脱いでくれて企画してくれた(川上氏の人となりについてはこちらを参照)。ありがたい〜
今回は、同じく今年に新著『だめ連の資本主義よりたのしく生きる』を出版した、だめ連の神長恒一氏もわざわざ東京から合流してトーク! そして、『くらしのアナキズム』などの著書がある松村圭一郎氏が豪華すぎる司会を務めてくれるとのこと。これは大変だ〜

これは一大事だと、愛媛中島でもらった大量のみかんを来場者にプレゼント。どうだ、まいったか!
今日は囮モードの川上さんは写真中央で、右が松村さん。

とんでもないトークスタート。トーク内容は例によってほとんど放送禁止なので書けない。放送禁止級の内容じゃなかったとしても、ネット上で説明しても伝わらないか勝手にわかったつもりになってしまうかで、あまり報われないことが多いのが難しいところ。ライブとか演劇内容を記事で読んでもわけわからないのと同じ。なのでイベント内容は割愛(笑)。かいつまんで言えば、どうやって勝手に生きていくのがいいかって話。

会場は、6月にもイベントをやらせてもらった倉敷のKAGというスペース。ここの一階は市場ではなくカフェバー。ハンバーガーがおいしい。

倉敷での打ち上げは例によって近所の中華料理屋にて。写真右が暮らしのアナーキスト松村さん。“アナキズム”という言葉が好きではないので、『くらしのアナキズム』も恐る恐る読んでみたら、すごく面白かった。左派業界に蔓延する、清貧を愛するような風潮ってすごく苦手なんだけど、本の中では、訳のわからない謎の親玉とか商売しまくりの活気とかたくさん紹介されててメチャクチャよかった。

で、打ち上げも宴もたけなわになってきた頃、まさかの伏兵が出現。そう、上の写真の左端で見切れている男。顔を合わせるやいなや「おい、マガジン9の老人決死隊読んだよ! 俺も同い年だよ!! そうだよ、もう勝手にやるしかねえよ!」と、いきなりものすごいテンションで言ってくる。まさかこんなところに老人決死隊の伏兵がいるとは!! そう、これは“人生100年時代”に対抗して、“50以上は老人、70以上は超人と定義し、50超えたら真面目に生きるべきではない”とする新説。この新説、若者にも老人にもイマイチ反応は薄く、40代後半〜50過ぎぐらいの世代のみにものすごく刺さっており、各地をウロついていると、たまにものすごいテンションの新老人に出くわす。よ〜し、団塊世代が最後の戦いをせずに耄碌して行っているのを見てきた我々の世代としては、こっちはそうは問屋が卸さねえぞ〜
ということで、「いうこと聞かないクソ老人になろう」と誓い合い、固く握手。
そんな感じで、岡山作戦終了〜

【四国奇人伝 No.68】高松のねずみ男・藤井佳之  中四国巡業④

愛媛から香川へ。そしてやって来たのは妖怪が集う魔窟の都・高松に到着。高松にはいいお店やちゃんとしたお店がたくさんあり、他の都市とも引けを取らない街なんだけど、「なタ書」という強烈な店のインパクトが強すぎて、高松=邪悪な妖怪都市の印象がどうしても払拭できない。そんな“なタ書”の店主が藤井佳之氏だ。
今回は、彼の一日を追ってみたい。

はるばるやって来ました、これがそのなタ書。古い建物の2階の店舗で、なかなかの異彩を放っているかに見えて、よく見たら周りも結構ボロい建物が並んでるので意外と溶け込んでいる。高松市の市街地の真ん中にあって、いつでもフラッと立ち寄れる便利な立地なんだけど、まさかの完全予約制の書店なのでそう易々とは立ち寄れない。そう、わざわざアポ取って店主とマンツーマンの状態で本を探す緊張感を味わえる前代未聞のシステムの店だ。
そしてこの建物の2階に巣食うのが、高松のねずみ男と恐れられる藤井氏。いつ何をしでかすかわからないとんでもないイカサマ師で、高松はおろか四国中の大バカシーンから常に遠巻きに固唾を飲んで見つめられている。
言ってることが本当なのか、大ハッタリなのか、あるいは突如何をし始めるのか、掴みどころがないため周囲の人の評価も大きく違い、「やつはメチャクチャだ! ふざけてる!」と憤慨する人から「あの人は全て計算し尽くしている天才だ!」という人まで、雲泥の差。どっちにしろ、ただ者ではないことは確かだ。

掴みどころがないやつとなれば、ひとまず懲らしめるしかない。
ということで、この日は、普段高円寺から放送している「素人の乱・残党ラジオ」をなタ書から放送するという特別企画で、この日は自分以外にもラジオチームの松本ルキツラ、池田佳穂の2名も参加して奇襲放送を行うという予定。コロナ禍の中では電話出演してもらったこともあるので、今回はその意趣返しだ。さあ、妖怪藤井佳之はどう出るのか!?

というわけで、なタ書に殴り込みをかけて突如ラジオ放送を開始! 事前に襲撃予告をしていたので、高松からも多くの群衆が押し寄せていて、早くも大混乱に!

奥のレジでとぼけた顔で座るのが妖怪藤井氏。
ラジオ序盤は、高円寺話やら藤井さんの身の上話など多岐に渡りつつも、意外にも穏便な進行で平和に進む。おかしい、妖怪藤井が穏やかにカルチャーの話とかしてる。これは何かある!!
90分番組の放送は、音楽をかけたりしつつ平穏なまま終盤に差し掛かった。

そして、番組終了30分前、どこでスイッチが入ったのか突如戦闘モードに入る妖怪! いきなり東京にケンカを売り始めたり、「なタ書より素晴らしい店があるなら教えろ!」などと挑発し始めたり、テンヤワンヤに。えっ、今かよ!
上の写真を見よ、明らかに違う態度で、かかって来いコノヤローモードに! そして、よく見たら直近で読んだ本は上方落語の本と思われる机。これはタチが悪そうだ!!
“襲撃事件”という番組タイトルで分かると思うが、言ってみればプロレスみたいなもんで、「コノヤロー」と乱闘寸前の状態から最後は適度なところで収まるのが暗黙の了解。それをあえて逆の進行でやって来てくるあたり、やはりさすがはねずみ男、一筋縄では行かない!! 天然なのか? 確信犯なのか?

ま、そんな混乱の中ラジオも終了。ラジオは後からでもstand.fmで聴けるので興味ある人は聴いてみてほしい。さて、その後はいつものパターンで、藤井さんの高松町案内コーナーの始まり! そう、藤井さんはいつもお客さんが来ると市内の面白いスポットなどを案内してくれるのだ。
さっさと後片付けをして、早く街に出ようという藤井さん。さあ、今日はどんな高松DIYシーンを見せてくれるのか!? くわばらくわばら。
荒れ果てたなタ書を後にして、我々を従えて颯爽と風を切って街を闊歩し始める藤井さん。
おーい、早いよ藤井さん、待ってくれ〜

…と思えば、早速街でヒマを持て余すギャルに声をかける。早い!! しかも、第一声でいきなり「おい、君たち。あの有名な松本哉さん本人がいるんだよ、ここに」とか言い出す。おい、知る訳ないだろ〜! ただ、ハッタリ妖怪の藤井氏のすごいところが、ものすごい堂々と言い出すので、ギャルたちも本当の有名人かと思い「誰? 誰?」と食いついてくる。藤井さんすかさず、すぐにスマホで俺の本を検索して見せて「この本、読んだことないの!?」とか大ハッタリを連発! ちきしょ〜、俺をダシにしやがって〜(笑) でも藤井さんの話術は面白いから、意外と話し込んでて、「我々はこれから飲みに行くけど、どうですかキミたちも」なんて誘ってる。
まったく、そんなハッタリで声かけたって相手にされる訳ないじゃねーか。

と、思いきや結局、飲もう飲もう、ということになり、藤井さん行きつけの居酒屋に。高松どうなってんだ!
カウンターカルチャー巡りどころか、いったいなんの飲み会に巻き込まれたかと思いつつも、まあそれはそれで面白いかと藤井さんの演説をはた目に聞きながら飲み始めると、「今日はこの松本哉先生のおごりだから遠慮なく飲んで」とかギャルたちに言い出す藤井さん。で、「えっ、いいんですか!?」と喜ぶギャルたち。コラー、なに言ってんだ〜! とは言って、巻き込まれた若い子らに金払わせる訳にもいかないので、まあまあなんとかなるでしょ、とか適当に言ってごまかす。するとすかさず、藤井氏がコップを持って「松本さん、いただきます!」と頭を下げる。うまい! 絶妙のタイミングだ! …って、感心してる場合か〜! はいはい、わかったわかった、金のこと考えたって酒が不味くなるから、こりゃもう腹括った。払えばいいんでしょ、払えば。おーい、大将、ビール3本持って来て〜!

その後、しばらくどうでもいい話で盛り上がりつつ適当に飲み、その女の子たちも次の約束があるとのことで、まんまと「松本さんごちそうさまでした」と挨拶して帰っていき、じゃあ残った人でもう少し飲もうか〜、となった、その30秒後、その時、歴史は動いた。藤井さんも「じゃ、僕もそろそろ。松本さんごちそうさまでした」と丁寧に挨拶して、なタ書の常連客や高円寺組などをほったらかして素早く出口に向かう。「えっ、藤井さん帰るの!?」と、みんなが引き止めるも、一度も立ち止まることなく「それじゃあ!」と、ビタ一文置かずに見たことない速さで帰っていった。あのヤロー、やっぱり完全にねずみ男じゃねーか! 大将、ビール5本持って来て〜!

すると大将、こちらへ来て、どっかと腰を落ち着けて飲み始める。もう閉店時間ってことで、店員さんたちは、もう呆れて先に帰っちゃう。これは長期戦の予感!
そこで大将、開口一番「いや〜、藤井さんはすごい人だよ。あんな天才はいないよ、本当に。高松の文化は全部あの人が作ってるよ、ホント。最初はどこの乞食かと思ってたけど(原文ママ)」と、ベタ褒め。なんかこれ、全員グルなんじゃないか? そういえば昔、二十歳ぐらいの時、ロシアでシベリア鉄道乗ってたら、こういう感じで次から次へいろんな役割の人が出てきて、まんまとモノ盗られたな〜。なんて思い出したけど、ここは高松。そんなはずはない。ただ単に強力な人材の宝庫に違いない! 手強い!
そして大将、ひとしきり藤井さん高評価話を語り尽くし、こっちも「なるほど、いろんな人を見てきてる居酒屋の大将がいうぐらいなんだから、こりゃ本当に傑物なのかもしれないな〜」という気になってくる。さらに大将、饒舌になってきて、いろんな思ってることを話し始めるが、酔っ払ってるのか何なのか「人間は宇宙人が作ったに違いない!」などという話になってくる。しまった、理解を超えてきた! 完全に不得手な方面への話題になってきてたじろぐ高円寺チームだが、そこへ登場したのが、なタ書の常連客の大学生の藤本さんだ。誰もが口を挟めないような大将の絶好調の話題に、時折り「でもそれって、⚪︎⚪︎のことですよねえ」とか、鋭いツッコミを入れ大将を怯ませたりしつつ互角に渡り合う。これはすごい! ま、ともあれ、酔っ払いのカオスなトークのまま宴は続き、適当なところでお開き。会計は当然全部俺。いや〜、壮絶だったけど楽しかった〜

で、翌日、藤井さんに会うと、「松本さん、昨日本当に全部払ったんですか!? ええっ? いや〜、さすが太っ腹だな〜」などと、相変わらず本心が読めない話術。そして、「昨日はあのあと大将も絶好調ですごかったですよ〜。話、時々わけわからなかったけど、仲良くなりましたよ〜」と言うと、藤井さん「えっ、そんなに長居したんですか? 俺、大将と飲んで話したことないですよ」だって。コラー、お前常連じゃないのか〜!!! うっかり話し込んじゃったじゃないか〜! っていうか、それも本当かウソか分からなくなってきた!!
やはり高松、手強すぎる!!!

と、怯んでいると、「街を案内するからついて来い」と、勝手にテクテク歩き始め、朝からまた街を案内し始める。嫌な予感しかしない。妖怪藤井に勝てる気がしないので、諦めてついていくと、藤井さん時折振り返って「『マヌケ反乱の手引書』に載ってそうな高松のオルタナティブスペースとか案内すると思ってるでしょ。そうじゃないとんでもない場所に連れていきますから。すごいものを見せますよ」と、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、またテクテク歩き始める。やはり嫌な予感しかない。

そのままこちらを振り返りもせず、迷うことなく雑居ビルの2階に吸い込まれるように上がっていく。同行しているルキツラは「人を殺しにいくみたいだ」と恐れおののく。

どこかの事務所に入るや否や、そこの事務員の人に「今日は、あの有名な松本哉さんをお連れしたので、お茶か何かを」などと、またどこかで聞いたことあるようなことを言い始める。あまりにも堂々とした藤井さんの態度にスタッフの人も急いでお茶とお茶菓子を持ってくる。読めない! 藤井さんとこの謎の事務所の関係性がわからないだけに、これは難しい! どうやらアート関係のNPO事務所らしく、なぜか我々がその事業内容などの話を聞く間、藤井氏はお茶とお茶菓子でゆっくりくつろぐ。その自然体、完全に座敷わらしクラス。
で、頃合いを見て「じゃ、そろそろ行きましょうか」と藤井さん。これ、本当に案内したかったところなのか? 藤井さんが休憩したかっただけなんじゃないだろうな。こっちの名前をダシにしてるだけに、ウロウロすればするほど自分の評判を落とすことになるんじゃないかと不安がよぎる。

次に、ゲストハウスの前を通りかかった時、これまた迷いなくスッと入る。1階にコワーキングスペースがあるところで、高円寺のマヌケゲストハウスとは違って、きれいなところだ。
「こちらが、あの松本哉さんで、ゲストハウスもやってる世界的に著名な方です」と藤井さん。出た〜!! わかったわかった、もうそれでいいよ。一応知り合いのところらしいけど、その真相は闇のまた闇。対応してくれたスタッフはまだ新人の人。藤井氏の話を聞いたそのスタッフの人からしたら、高松の最重要人物の藤井という人が世界的に著名な松本という人を連れてきたので、これは大変だと、「本来コワーキングスペースの使用は有料なんですけど、ひとまずどうぞどうぞ」とコーヒーを出してくれる。終始恐縮する高円寺組。
そして、高円寺組がそのゲストハウスの話などを聞いてる間に、「ちょっとWi-Fi借りていいですか?」と藤井さん。おい、それが目的か!
で、頃合いを見て「じゃ、ぼちぼちおいとましましょうか」と、次へ向かう。いやー、これ、俺もう二度と高松に来られなくなるんじゃないかな〜

そのあとはレコード屋さんを案内してくれたり(ここ、すごくいいレコード屋だった!)、また適当に散歩をする。

ちなみにこれが居酒屋の大将いわく「いっつも変な袋持ってウロウロしてて○○(原文ママ)にしか見えないんだよ〜」っていう藤井さんの袋。この中身を見た者は死ぬと言われている。

この藤井氏、各所で口から出まかせでツケ入ってるようにも聞こえるかもしれないけど、あながちそうでもない。確かに顔はすごく広いし、高松のみならず各地のアートやら書店やら、行政も関わる大きなイベントなどにも絡んでたりと、ただのイカサマ師ではない側面もたくさん備えている。さらに、なんだかんだと面倒見がいい面もあり、初対面の人にもよくしてあげたりすることも多々ある。例えば例のギャルに声かけた時も、変な下心あるナンパみたいな感じじゃなく、普通に話聞いたり高松のこと教えたりうどんを食べさせてあげたり(他人の金で)してたし。
とは言え、突如本当だかウソだか分からないやたらでかい話が始まったりもするし、全員がケムに巻かれる感じ。

そして最後の最後、「じゃあご飯を食べに行きましょう」と、渋い定食屋に連れて行ってくれる。ここのおかみさんがものすごく無愛想な人で、怒らせたら怖そうなタイプ。ここで例の「このお方が有名な…」作戦が始まったら「あんたなんか知らないよ!」とケンカになるに違いない。今度はどんな手を使ってくるのか、頼むから発動してくれるなとビクビクしていると、最後に藤井さん「ここは、私が」と、珍しく紳士な態度でみんなにおごってくれる。なんと! この酷い目に合わせたり合わされたり、いろんなものを巻き込んだりしつつ、最後は帳尻合わせてプラマイゼロに持っていくこの技術!!!
藤井さんさすがだなあ〜、と感心しつつ別れを告げ、ラジオのお礼などもして再会を誓って、藤井さんの後ろ姿を見送る高円寺組。
ただ、よくよく考えたら、あのおかみさんが怖そうだから怖気付いただけのような気もしてくる。

全てを計算した凄腕の人物なのか? まぐれで何もかもが上手くいく天才なのか? はたまたとんだ食わせ者の妖怪なのか?
全ては闇のまた闇。

諸君も、この謎に迫るためにも高松のなタ書に遊びに行ってみよう!

中四国巡業③ 中島 特別ミッション・松本家先祖代々の墓参り

さて、愛媛シリーズが終わり、次は高松行きなんだけど、ちょっと一日空いてたので、急遽瀬戸内海の島・中島へ。
自分自身は東京生まれなんだけど、うちの松本家は実はこの島の出で、家の墓もここにある。あんまり荒れ放題にしておくと、自分の死後、先に墓に入ってる父親やジイサン、バアサンなどにあの世で死ぬほどぶん殴られるに違いないので、たまには墓の手入れを。
これがまた、船でしか行けないとんでもない島なので、行くのもひと苦労だ。

親戚の家に電話しても一向に出ないので、若干心配だったが、アポなしで行ってみると、みんな呑気に庭でお茶飲んでた。確かに、こんな全員知り合いみたいな島でいちいち携帯電話なんか持つ必要なかった。
突然行くと、「ウワー、帰ってきた!」と大騒ぎに。行く度にそうなんだけど、いつも「帰ってきた」と言われる。自分は東京で生まれ育ってるから東京の人間のつもりなんだけど、先祖代々の長期間のスパンで考えたら、つい数十年前からちょっと東京に出てるだけの話らしい。うーん、スケールが違う!!

ちなみにこの島、昔はずっと海賊の島だったんだけど、海賊業は流石に今はできないので一面みかん農家で、かつてとはうって変わって平和な世界。田舎にありがちだけど、「みかん持って行きなさい」と言われ、適当に20個ぐらい取ると、そんなんじゃ足りないだとと、勝手に段ボールに山盛りにして強引に持たされる。
ちなみに昔の話をするとき、島の人に「海賊」というと決まっていい顔しないので、それはやめた方がいい。みんな「水軍」とか「船乗り」みたいな言い方をする。で、90代の人なんかが昔の話とか教えてくれるんだけど、そんな話の隙に誰かが「ま、倭寇もやってたしねえ」と、ポロっと言う。やっぱりそうか〜! 瀬戸内海で海賊(水軍)やってるってことで、薄々はそう思ってたけど、そりゃやってるよなー。そう、言わずと知れた、外洋に出て東アジア圏の大陸沿岸部を襲って略奪とかする、あれね。
倭寇の子孫となったら、こりゃいよいよ罪滅ぼしがてら東アジアの連中には優しくして仲良くしとかないとな〜
さて、「またちょくちょく帰って来いよ」と何度も念を押され、墓に向かい、とりあえずの手入れ。

その後、このまま帰るのもなんなので夜飲むところとかないかと探してみると、唯一、集落のはずれに「ナイトカラオケヒットスタジオ」という、寂れた島の中で燦然と輝くネーミングの飲み屋を発見。これは行かざるを得ない。
よくよく考えたら、いつもは親戚の家に行って墓参りして終わりなので、島で遊ぼうなど夢にも思ったことはなかった。これは楽しみだ! さっそく行くしかない!

着いてみると、どう考えても人の家。居酒屋という看板はかかっているが、たまたまなのか中から人の気配は全くない。ヒットスタジオというより、どちらかというと注文の多い料理店。入るか? 帰るか!?

勇気を出して中に入ると、まさかの居酒屋。ただ、誰もいない。「すいませ〜ん!」と、声を張り上げること5回。やはり注文の多い料理店じゃないかと不安になってきた頃、店主と思われるじいちゃんが出てきて「なに?」という。「飲んで行ってもいいですか?」というと、えっ、と驚いたような顔をして「いいよ」という。その後、ばあちゃんも出てきて、夫婦でやってるらしい。いや〜、まさか中島で飲めるとは!
「観光かい? 島は初めて?」というので、「いや、実は親類やうちの墓があって、子供の頃からたまに来てるんですよ」というと「ああ、そうかい。親類って誰?」という。さすが島。絶対知り合いの知り合いとかそんな感じで繋がるんだろうな〜。で、親戚の名前を出すと、案の定、あ〜、その長男のところに嫁いだ誰々の家の従兄弟の誰々が私だよ、だって。…って、遠い親戚じゃねーか、島恐るべし!! で、その後来ていたお客さんを指して、あの人はほら、おたくの誰々と縁組した誰々のあれだよ、みたいな感じで教えてくれて、そっちも遠い親戚。島やばい! 全員が遠い親戚! う〜ん、この島ではなにも悪いことできない!!笑

しばらく飲んでると、おばちゃんが「裏も見て行きなさい」という。すると、裏には島最大規模のステージが! おおー、これか〜、これは確かにヒットスタジオだ!! やられた! おまけに小道具やら貸衣装なんかも置いてあって、これは島の人たちが集まってとんでもない大宴会が繰り広げているに違いない。すごい!!

ちなみに、島から松山に戻る終電ならぬ終船は夕方5時半なので、そのまま車で車中泊して、翌朝松山へ。

中四国巡業② アオト作戦! 松山&今治

広島作戦を終え、翌11/30には船で愛媛の松山へ。

四国に着くとまずリサイクルショップを手当たり次第回る。実は業界でも有名なのだが、四国は昔からリサイクル品の掘り出し物の宝庫。最近はさすがにガラクタの山のようなリサイクル店がどんどん減ってきたこともあり、それでもまだまだ侮れない。今回は別に買い付けなどではないんだけど、昨今の四国リサイクル事情を知るための調査。買って帰りたいものが山ほどあったが、今回はそんなことやってる場合じゃない。日本中、どこへ行ってもリサイクルショップを回って相場とか各地の状況を確認してしまうのは、これはもう職業病だな〜

松山のイベント会場は高本という食堂。ここは前も遊びにきたことがある場所で、食べ物もとてもおいしく、いい場所だ。
松山と今治の愛媛シリーズは「相談会」というテーマで、みんなでああだこうだ話しながら、それぞれがもくろんでるふざけた場所作りの計画や、すでにある場所をマヌケ化する作戦を練りまくったりして、お互い火を付け合うと言う集会。
今回の『世界マヌケ反乱の手引書』の内容もそうだが、自分としては東京での経験に基づいていろいろ書いてるだけなので、当然ながらそのノウハウを地方都市では適用できないところも多い。なので、変に講演会みたいな一方的なトークよりこういう形の方がすごくいい。それぞれの場所での知恵を教え合ったりもできてやたら実用的だし。

案の定、イベントでは高円寺ではどうやってスペースを運営してるかなんて言う話に始まり、みんな自分がもくろんでる計画の話やらを出してくる。さらには、行政関係や大手企業で働いてる人も意外といて、そんな職場をどうマヌケ化するかっていう作戦を練ったりと、以上に具体的なイベントに! さらには、ドサクサにまぎれて愛媛のローカルFM番組の収録なんかも始まり、謎の展開に。とんでもない計画などもいくつか登場したけど、これは放送禁止なので、成功の際に披露することにしよう。
終了後は、近所の居酒屋で打ち上げになり、例によって深夜まで。いや〜、またさらに松山の友達がたくさん増えてよかった。

余談だけど、よく本にサインを求められたりもするんだけど、だいたいこんな感じ。愛媛大学の先生から「学生たちに読ませるから、やつらにメッセージ書いて!」と頼まれたので、これを。

翌日、中四国ドサ回りも中盤に差し掛かるにあたって、謎の台湾人ユミちゃんが合流。蛇口からポンジュースが出てくる完全にふざけた場所=松山空港にて。

松山を去る前に、何度か行こうとして行きそびれていた書店「本の轍」に。店主の越智さん、やたらゴキゲンな人でいい感じだった。中国や四国回ってると、書店の店主がみんなやたら陽気な人でいい。ここもいろんなイベントもやってるとのこと。またゆっくり来ないとな〜

松山から今治へ向かう途中、ちょっと寄り道。写真の彼が今回の愛媛シリーズの首謀者のアオトくん。「最近家借りたんですよね〜」と言うので遊びに行ってみたら、家賃5000円だって。俺の高円寺のアパートが月6万円だから、なんとこの家の一年分の家賃! 愛媛どうなってんだ〜!

さて、今治。この日のイベントは「ブックカフェ 森」。こちらも古民家を改装したようなメチャクチャカッコいい建物。やはり地方には東京にないものがたくさんあるな〜

立っても座っても快適な無敵の床=畳が最高。東京も畳の部屋とか店、もっと増えてほしい!!

今治でも相談会。とんでもない計画が続出する中、「うちの村には500人しかいないので誰も来ないけど、どうやってスペース作ったらいいでしょう」みたいな一休さんのとんちクイズのような質問なども飛び交い、それをみんなで知恵を絞るなど、有意義なイベント。
そしてまた、この森の豊島さんがまた高円寺と似てて商店街のじいちゃんばあちゃんたちといろいろやりながら独自スペースも切り開いてるという、なかなかの人物。そんなわけで、高円寺と今治で何か共同作戦やりましょうと、またもや無責任な約束をしてしまったので、これは何かやらないと! いやー、こう言うノリで何かが始まる感じがいいんだよね〜

例によって打ち上げ。みんな今治近辺の人たちなんだけど、高円寺みたいに全員が歩いて5分のところに住んでるってわけではないので、みんな本屋の2階に泊めてもらう人がいたり、車で車中泊して帰る人がいたりと、完全に村の寄合みたいな感じ。東京にいる時は「歩きか、せめて自転車で帰れる距離感で街づくりをするのが重要」と、思っていろいろやってきてるけど、地方の場合は、泊めてあげるスペースもあるし、車みんな持ってて停め放題だし、楽勝でクリアしてて「やられた!」と思わされる日々。

と、いう感じで、松山&今治の愛媛シリーズ終了〜。次は、「なタ書」藤井氏が待つ、四国のサザンクロスこと高松へ。

『世界マヌケ反乱の手引書』中四国巡業を開始〜 呉&広島

 『世界マヌケ反乱の手引書』が加筆して文庫化されたドサクサにまぎれて中国四国一帯を回る地方巡業ドサまわり作戦を開始!

まずは広島。ひとまず広島の首謀者である行友太郎氏の根城の呉へ。ちなみに弟の文太氏(通称:大将)はもっと物騒なことばかり目論んでるやつで、学生時代から俺にいろいろ悪いたくらみばかり吹き込んで来て、こいつのおかげでだいぶひどい目にあった(笑)。さて、兄貴の太郎も弟に引けを取らない不穏分子で、呉のヤバいスペースをひと通り案内してくれる。「とりあえず呉はここに行っとけば間違いない」というオススメされたのがREBELというBAR。このサウンドシステムがやる気を物語っている。
この後も、屋台やBARなど数軒をハシゴして、いきなり飲んだくれて、先が思いやられる。

死んだように眠り、翌日は午後から慌てて広島市へ移動。到着するやいなや、この日の会場の「オルタナティブスペース・コア」の運営チームが迎えてくれて、まずは平日昼間からお好み焼きとビール。最高すぎる。

このスペース「コア」は、アート系のイベントや展示から、DJイベント、トークショーなどいろんな企画を乱発するスペースで、行友ブラザーズ曰く「いま広島でかなり飛ばしてきてるのがコア」とのこと。
ここのいいところは、超巨大な古い市営住宅「基町アパート」内の商店街の中にある。70年代ぐらいに作られた団地って、今のタワマンの真逆の発想で作られていて、人が集い、共に生活するのを前提にデザインされているので、団地のどこからでもアクセスしやすいような場所に無数の商店街が形成されている。しかも、カッコばかりつけて無色透明なしょうもない店じゃなくて、めちゃくちゃローカルな地に足のついた土着感満載の店のオンパレード。じいちゃんばあちゃんたちが集う遊び場もあるし、渋すぎるスナックや中華料理屋なども。あ、先ほどのお好み焼き屋もこの中にある。
なので、準備してる段階で、通りがかりのじいちゃんばあちゃんがヒョコッと顔だして「今日なに?」「何売るの?」などとやたら顔を出してくる。いやー、いいね、こういうの! 

広い! バーカウンターだけあってあとは何もないという最も使いやすいスタイル。いろんな種類のイベントをやれるスペースを開きたいときはこのスタイルが重要。これ、世界各地で共通。ちなみに、こういうスペース維持の重要な収入源はやはりドリンク販売なので、バーカウンターをちゃんと作るのもとても大事なこと。物を売るときに最も重要なのは“本気度”を醸し出すことなので、即席に折り畳みの長テーブルなんかでビールを売るのと、ちゃんとしたカウンターでビールを売るのでは、面白いことに売上が全然変わってくる。つまり、バーカウンターがしっかりしているスペースは長続きする率が上がる。

続々と謎の人々が集まって来る! みんないろんな情報源で駆けつけてきてくれるけど、直接知り合いのスペースなどにチラシを置きに行くのが一番来てくれるとのこと。やっぱり時代はアナログか〜
すごいのは、「素人の乱・残党ラジオ」をいつも聞いてくれていた広島の人が、前日にたまたま放送を聞いた時に「なに! 明日広島だって〜!?」と、驚いて駆けつけてきたという人もいた。やっぱりアナログか〜

今回はいろんな出店もあり。広島で異彩を放つ服屋の絶滅危惧種。高円寺にもしょっちゅう遊びに来ることもあり実はかなり昔からの知り合いで縁が深い。彼がまたやたらノリが良く、この日もイベント終了して打ち上げも終わって、さらに解散ってタイミングでも「ここはラーメン食べに行くしかないでしょ」と、深夜まで飲むことになった最終チームのひとり。深夜までやってる飲食店が近くに少なく、チェーン店で我慢するか〜、と、最後の強豪組が弱気になってもなお「いや、ここでチェーン店ってのは違うでしょ〜」と、信念を発揮し始め、強引にタクシーに乗って遠方の個人店のラーメン屋へ。カッコよすぎる!

広島で最高レベルのイカサマ師にしてヤマ師なのが、このステップさん。今回は「アトム園芸」という店名でサボテンを売っているが、隣にはだしのゲンが並んでものすごい付箋が貼ってある。何かというと、これ普通のサボテンじゃなくて、いろいろ継いだりして、それぞれにはだしのゲンにまつわるコンセプトがあるという。例えば、ひとつは「ゲンが食いちぎった町内会長の倅の手」というサボテン。他にもいろんなシーンのサボテンが並んでる。すごい! それいい!
感動して「これ、昔からやってるんですか?」と尋ねると、「いや、今回がはじめて」とのこと! どうやら、食うに困って一発勝負でまたヤマ師感出して訳のわからないことを始めたらしい。しかもよく見たら帽子に「山」って書いてあるじゃねーか! 最高すぎる。

先述の大将(行友弟)が出すのは不穏な書店。とりあえずブックオフのゴミのように投げ売りコーナーで100円とか200円とかで売ってる中から、「ニセ札」だの「百姓一揆」「働かない」「ドブロク作り」だのを見つけ出し、それを倍の値段で売るという、ふざけた書店。要は無用に不穏な空気感を醸し出し、支配者や秩序を重んじる人々を不安にさせるための書店。相変わらずバカなことやってるな〜。これ、いろんな街でやってほしい。

その悪名高い大将は写真中央のやつ。この男がウロチョロし始めたら何か悪だくみが始まってる可能性が高いので、みんなで警戒しよう!笑
あ、それと、前日の夜、呉で飲んでいた時に最後に行った店「BAR MANGER」のマスターが突如遊びにきてくれた! メタルコアのバンドをやってる人で、やたらとノリが良くいろんなことに食いついてくる楽しい人で、その日も酔っ払いながら「明日イベントやるんですか? 行きます!」とか言って、まんまと本当に現れた! すごい! マスター曰く、「酔っ払って勢いで行くって言ったのを、翌朝二日酔いでうっすら思い出して、これ行かないとカッコ悪いなと思って、来ましたよ〜!」とのこと。さらに「店に来るお客さんでも、『また明日来ます!』っていう人多いけど、十中八九来ないんですよね〜。俺はそうじゃないってところ見せたいんで」と、謎の意地を見せてきてカッコよかった! そして、一杯飲んで本まで買ってくれて「じゃ、店開けなきゃいけないんで!」と、また呉まで帰って行った。すごい! すごすぎる!!

打ち上げは、これまた団地内にある居酒屋へ。おばちゃんたちが集ってて絶好調の店で、ママもご機嫌ないい感じの店! いま、日本中で再開発をもくろんでるような世間知らずの行政のやつらは、こういう近所の人たちが集って人が繋がる店がどんどんできるような思想でまちづくりを考えてもらいたい。っていうか、もっと言うなら、余計なことはせずに街ができていく自然な状態を大事に考えてほしい。

写真左寄りの二人がコア運営の主要メンバーのヒョンギくんとユイちゃん。トークでも面白い話してくれたし、二人ともいろいろやってくれてすごくありがたかった! これは高円寺に来たらもてなさないと〜!!

と言うわけで、広島作戦なんとか終了。フェリーで瀬戸内海を渡り、松山へ。これから愛媛シリーズ!!

まだ読んでない書評『どうげんぼうずという仕事』

またとんでもない本が出たので、素人の乱5号店に仕入れてしまった〜! と言うわけで、例によって読む前に紹介。書評っていうと、当たり前だけど基本的には本の内容を紹介して、あの部分がどうこう、読みどころはここがポイント、あのくだりが良かったイマイチだった、などと評するのが基本。
…なんだけど、本って意外と手に取るまでの経緯がすごく重要だったりする。そもそも毎日のようにとんでもない量の新刊本が出る中、わざわざその本にたどり着くってなかなかの事態。音楽とかもそうだけど、やっぱり手に取るまでの経緯が大事で、誰にオススメされたとか、どのシチュエーションで手にしたかとかかなり重要だったりする。そんなこともあって、読む直前までの事を書くの書評(っていうか書評じゃねーな、それ!)って、なんか好きなんだよね〜

ともあれ、読む前に仕入れることを決めたのがこの本『どうげんぼうずという仕事』
ジャーン!

「どうげんぼうず」っていうのは中野・鍋屋横丁にあるラーメン屋の名前で、そこの大将のチカヒロ氏を書いたドキュメンタリー本だ。で、このラーメン屋がただもんじゃなくて閻魔大王みたいな店。差別主義者がいたら懲らしめに行ったり、パレスチナで虐殺が起こればイスラエル大使館に文句言いに行ったりと、悪を斬って斬って斬りまくる、完全に時代劇のようなことになっていて頼もしい店。そんなわけで、店内にもはびこる悪を懲らしめる宣言のステッカーで埋め尽くされており、自民党やら差別思想の持ち主なんかからしたら、店に入った瞬間に虫の息必至のようなオーラ全開で最高。

そういえば、初めてどうげんぼうずに行ったのは5年ぐらい前だったか。当時うちのリサイクルショップ(素人の乱5号店)でバイトしていたアマネちゃんという子が、かつてSEALDsの高校生版みたいなところ(たけし軍団セピアみたいなもの)にいたこともあり、その繋がりでなのかチカヒロ大将とは親しかったみたいで、仕事の外回りの途中にそのアマネちゃんと昼ごはん食べようってなった時、「鍋屋横丁にめちゃくちゃ戦ってるとんでもないラーメン屋あるから行きましょうよ」というので、断りきれず、斬られたらどうしようと恐る恐る行ったのが確か初回。意外にも殺されることもなく、それどころかやたらいい人で、しかもラーメンもやたら美味かったこともあり、それ以降は中野方面に仕事で行くついでに行くようになった。

そしてこの度、やはり同じく「こりゃただ事じゃねえ〜!」と飛び上がったと思われる川口さんというライターさんが、勢い余って書籍化に乗り出した模様。その勢いで来るんだったら、こりゃ、こっちもラーメン食ってる手前、ひと肌脱ぐしかないじゃねえか。よっしゃ、仕入れるぞ〜
そんな流れで、うちの店でも取り扱わせてもらうことに。巷にはいろんないい本があると思うけど、どんなに正しいことが書いてあったり、素晴らしい本だったりしても、普段はなかなか「じゃあうちの店で置きますよ」とはならないんだけど、ラーメン食べに行ってるとなると話は違う。そういう日常生活の中でのつながりって自分の中ではものすごく大事なことなので、つべこべ言わずに「置きましょう!」となる。ちなみに、素人の乱5号店で取り扱っているいろんな本やバンドのCDなど全部そんな感じで、ちゃんと人としての繋がりがあった上で、信頼できる人のものだけを取り扱うことにしている。

さて。繋がりの問題だけじゃなくて、もうひとつ店で取り扱いたくなる理由がある。チカヒロ氏が個人商店主だってこと。しかも誰が来るかわからない不特定多数を相手にした商売のラーメン屋。この本をパラパラっとめくってみても、近所のガキンチョの話や老人の話が各所に目に付く(まだ読んでないけど)。こういうのって超重要なんだよね〜。うちの店もリサイクルショップってこともあり、もはや誰が来るかわからない。用もないのに世間話しに来る現れる近所のじいさんばあさんやら、個人的な困りごとの相談にやってくる若い奴らなど、リサイクルにはおおよそ関係のない来客者も続々やってくる。こういう街の中で近所の人たちと生きることって、自分もすごく重要だと思ってるしね〜。ものを言う商売人の存在っていざって時にも超大事。

そんなことで仕入れることになり、早速納品しにきてもらったんだけど、パラパラっとめくってみて、ふと目についたのがこの写真。なに〜! これ、あんただったのか〜!!!!!笑

そう、2011年当時、高円寺でも原発反対の「原発やめろデモ!!!!!」というのをやり始めてたんだけど、勢いで始めたものの結構人が集まるようになったので、主催側でよく話してた、…というか自分が常に主張してたのが“いかに運動を組織化させないか”ってこと。最初は勢いと瞬発力でバーっと広がるけど、どうしてもメインで動く人間が固定化してきたり、中心ができてきたり、運動を起こしてるグループが団体のような雰囲気になって来がちで、徐々に呼びかける側と参加する側に別れていく感じ。そうなってくると、世間的には「あ、この辺のこんな感じの人たちが反原発運動やってるのね」っていう空気感が出てきがちで、そうなると日本人特有の後乗りするのを躊躇する謎の風潮なんかも相まって、そうなった瞬間に運動って力を失ってしまう。なので、敵に姿を見せてはいけない、ってことを心がけてた。あ、タイミング的にいいので一応言っとくと、ここでいう“敵”って、原発再稼働をした野田政権ね(俺は今でも野田を許してない笑)。要するに、当時求めてたのは、いろんなところでいろんな奴が「ふざけんなー」と怒りはじめて収拾つかない感じ。これ、時の権力者からしたら、一番怖い。仮にイメージに過ぎないとしても誰かが号令を出してる雰囲気になってしまったら、そこが狙われて終わりなので、よほどのとんでもない革命運動でもない限りは権力者に軍配が上がりがちだ。なので、どこで誰がどう目論んでるのかわからないぐらい各地でいろんな奴らが反旗を翻しまくり、権力者からしたら「オマエら、一体誰なんだ〜!」と常に不気味がる感じがいい。で、さらに「なに〜、こことここがなんで繋がってるんだよ〜!」みたいな驚きがあっちこっちで見られたり、とりあえず不気味がらせたかった。現代社会のように分断されまくった民衆にはこの作戦が最強で、権力者をエンドレスのもぐら叩き状態に陥らせること。この作戦で一挙に畳み掛けよう〜、なんて当時盛り上がってたけど、そうなってくるともはや時間との戦いで、結局時間の流れには勝てず、世間的には徐々に風化していってデモは各地で盛り上がってるものの、運動やる人とやらない人の溝がどんどんと広がっていった感じ。あれ残念だったな〜〜〜〜〜

あれ、なんの話だっけ。…あ、しまった。本の紹介だった!

で、話を戻すと、上の写真。当時、そんな空気感の中でどこからともなくその写真が回ってきた。謎の兄ちゃんが国会の目の前でギター持ってなんかやってる。うわ〜、誰なんだこれ〜、最高じゃねーか! 完全にもぐら叩きが始まった!!!! と、勇気をもらった覚えがある。

そしてその後、そんな写真のことも忘れてて、たまたまラーメン屋に行くようになって、本が出るというので仕入れて、パラってめくってみたらあの写真。コンチキショー、世の中どうなってんだ!笑 

ともかく、そんなこんなで鍋屋横丁のラーメン店。個人店、しかもうかうかしてると物を言い出し始める個人店って完全にさっきの話の“もぐら”状態。普段は寿司握ってたり提灯作ってたり水道の修理してたり中古の洗濯機掃除してたり(←これはうち)すると思いきや、いきなりデモを起こしたりする感じで、おまけに稼ぎはテメエで作ってるのでかなり無敵。それに、個人店って人の生き様の具現なので、見てても面白い。昭和の田舎の成金みたいな発想のバカみたいな再開発のおかげで日本中から個人店が減っていく中、どうげんぼうずみたいな生き様や、普通の賃労働って意味じゃない“仕事”(意味としては必殺仕事人の“仕事”に近い)に遭遇することってすごく重要。しかも、この本は、肝心のラーメン作りの話から始まってるのがまたいい。
ってわけで、インテリや学者の正義の本でもなく、大きな組織や団体の幹部の提言本でもなく、個人店主の生き様の本。こう言う本って結構レアなので、ぜひ読んでほしい。

ってことで、素人の乱5号店に置いてあるので、さあ買った買った〜。あ、でも高円寺来るなら隣の鍋横行ってラーメン食いがてら直接買う方がいいかも。ま、どっちでもいいや!
とりあえず読むしかない!!!

【倉敷奇人伝 No.31】川上幸之介 『パンクの系譜学』が入荷!

「Punk! The Revolution of Everyday Life」という展示が2021年ごろから各地で開催され始めた。一般的には音楽のジャンルとして扱われがちなパンクだけど、そんな単純な話じゃねえだろ、ってことで思想的な面から生き方の哲学に至るまで、もっとトータルに体系化した展示。おお、すごい!
で、風の便りによると、その首謀者は川上幸之介という人で、西の方の奇妙な大学で教授をやっているという、謎の人物。いったい何者なのか。パンクに寄ってたらいかつい怖い人かもしれないし、学者に寄ってたら小難しいつまらない人の可能性大だし、どちらにしてもあまり近寄らないほうがよさそうだ! さらに、西日本の倉敷という謎のエリアに居を構えるわ、斬り捨て御免みたいな名前してるし、何かで遭遇したら「コラー、松本〜!」と、いきなりぶん殴られるか槍で刺されるに違いない。これはいよいよ捕まったら大変だ。よし、触らぬ神に祟りなし作戦だ!!

そして昨年の夏ごろ、アジア圏で木版画やってる人たちが上野で展示をやるというので、見に行ったことがある。ただ、あろうことかその展示会場の隣がPunk展。しまった! 謀られた!
まだ見ぬ強豪・人斬り川上幸之介氏、予想するに、身長は2.5mほどで、人の頭骸骨を砕くぐらいの握力を持ち、棍棒とかギロチンを持って鬼の形相で累々と重なる屍を乗り越えて徘徊してるに違いない。しかもイベントタイトルも、レボリューション・オブ・エブリデイライフ。日々の生活がすでに革命ってことで、そんな朝メシ前に革命起こしてるような強者に見つかったらそれこそ事だ。大変だ〜、殺される〜! 逃げろ〜!!!

さて、版画展を見たあと、そのまま斬り死に覚悟でPunk展へ。しまった、防弾チョッキ忘れた! すると、「あー、松本さ〜ん!」と声がする。振り向くと囮(おとり)風の男が笑顔で物販コーナーに立っている。しまった、囮だ! …と思ったら「川上です!」。ええっ、この人が川上さんなのか〜!! 話が違う! 優しそうな人じゃねえか。騙された!

↑左から、版画展企画のエガミ教授、囮の川上さん、自分、東南アジア圏のパンクに精通する高崎さん(彼も見た目はイカツイけどウサギのように優しい人)。

 普通にめちゃくちゃいい人で、自然な流れで「じゃ、このあとアメ横で飲みましょう」ということになり、他の友達も誘いみんなでアメ横の居酒屋へ。飲みながら川上さんともいろんな話をして盛り上がってると、よく見たらソフトドリンク飲んでる。「あれ、川上さん、お酒飲まないんですね」と聞くと、「いやあ、ちょっと諸事情あってやめてるんですよ〜」とのこと。こ、これはやはり余程の悪事を働いたに違いない。クワバラ、クワバラ。

まあそこそこ飲んだので、ぼちぼち帰りましょうかということに。川上さんも高円寺の近くに泊まってるとのことで、高円寺まで帰るという。ただ、こっちは迂闊にも車で来てしまっていた。というより、出先で飲みそうな時はたいてい店の軽バンで行って、飲んだらそのまま車で寝て翌朝帰るのがいつものパターン。なのでこの時も車を駐車場に停めてた。なので、「いやー、帰りたいんですけど、飲んじゃったし今日はここで寝て帰るので、川上さんお先にどうぞ」と挨拶すると、「いやいや、僕運転して行きますよ! 任してくださいよ」と、アメ横にいたせいか魚屋みたいにノリがいい。ただ、マニュアル車だったので「マニュアルだけど大丈夫ですか?」と聞くと、「大丈夫です!」と二つ返事。景気いいね、どうも。マニュアル車って最近はなかなか乗りこなせる人少なくて、以前も友達に車貸して2回ほど壊れて返ってきたことがあるので、一瞬心配になってしまったが、このアメ横のおっちゃんと化した川上さん「へい!マニュアル一丁〜」って勢いで、これなら大丈夫そうだ。疑って悪かった! よっしゃ、じゃあ高円寺へ帰りましょう〜

こっちは酔っ払ってるので助手席で、悪事に悪事を重ねたおかげでシラフの川上さんが運転席。さあ、出発〜! すると、ものすごく雑なクラッチワークで荒っぽく発進! おお、さすがパンク。それとも、これが全てを知り尽くした真の走り屋のテクなのか!? 駐車場を抜けて大通りに出て最初の信号などでは、青信号とともにものすごい空ぶかしで周囲を威嚇し、左右の車を先に行かせる余裕を見せた後、突如クラッチを繋ぎロケットスタートで急発進して追い上げる!! おお、プロの走り!!
よもやと思って、念のためふと運転席の川上さんを見ると、ものすごい脂汗をかきながら一点を見つめて運転してる。で、「いや〜、教習所以来30年ぶりですよ、マニュアル」と、ぼそっと呟く。コラー、素人じゃねえか!! 何やってんだ〜!

しかし、ここでうろたえてはみっともない。「車が故障したら大変だ」なんてみみっちいい魂胆を見透かされるなんてみっともないことはできない。ここは大きく出て、車の5台や10台大破したところでどうってことない余裕を見せつけて、ひとつ人間のデカさを知らしめるしかない。なんせ相手は革命エブリデーの強豪中の強豪だ。みくびられないようにしないとヤバい!
車の大破炎上なんて朝メシ前で、せっかくだからベンツやフェラーリも巻き込んで10台ぐらい一気に行きましょうや、…っていう空気感を出しつつ、小声で「クラッチ切って」「そろそろ4速に」と、こちらも脂汗を隠しながらアドバイス。さらに、動揺してないことを示すためにもコッソリ手のひらに人の字を書いて飲み込みながら「いやあ、川上さん。今度は倉敷に遊びに行きたいですね〜。2速、2速」などと不自然に世間話を振り、川上さんも「そういえば松本さんの本読みましたよ。面白かったなあ〜。…あっ!」などと、真っ青な顔でハンドルを握る。

謎のチキンレースと化した二人でそのまま平静を装う不自然な世間話をしながら車は進み、渋滞気味の上り坂に差し掛かると、まんまと赤信号になり、よりによってその中腹で止まる。後ろにはピッタリと高そうな乗用車が止まる。こ、これは…。絶体絶命の坂道発進の危機を薄々感じつつも「いや、しかしなんですねえ、昨今の政治は…」などと、話題に窮して明らかに二人とも興味のない会話が始まり、一方で親の仇のようにサイドブレーキを強く引く川上氏。それも束の間、青信号とともにブワーーーンというとんでもないアクセルを踏み込んだ爆音とともに一切発進せず、生まれてこの方見たこともないような白煙がもうもうと立ちのぼり、鼻をつくようなゴムが焼けたようなにおいも上ってくる。やばい! ただ、自分も川上さんもビビったら負けの痩せ我慢の権化状態になってるので、お互い無理に大きく構え、あたかもいつもの出来事のように振る舞いつつも「ああー!」「ワッハッハ」「いいですね〜!」「今日の煙はちょっと多いかな〜」などと叫び声をあげて不自然に盛り上がる。ただ、これハタから見たら完全にシャブ中の爆走車にしか見えないので、すでに周りの車は恐怖におののき、だいぶ車間距離をとり、ものすごく遠巻きにゆっくりと追い抜いていき、おそるおそる抜いた瞬間に急加速で蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

ともあれ、辛うじて坂道を脱出した我が軽自動車は、残りの行程もなんとかこなし、ボロボロの敗残兵のような感じになりながらも九死に一生を得て高円寺に到着。もちろん、お互い何事もなかったかのように「意外と近かったですねえ」「またドライブ行きましょう」なんて心にもないことばかり言いながら「も、もう一杯飲みますか」と、高円寺のなんとかBARへ。

さて翌日、その車を動かそうとすると、ウンともスンとも言わない。エンジンはかかるものの、クラッチが切れず、ギアも入らない。早速、毎度おなじみスズキ自動車の浦井工場長に連絡すると、「あ、それクラッチ焼き切れましたね。交換ですね〜。レッカー呼んで持ってきてください」とのこと。しまった〜! 痩せ我慢するんじゃなかった〜!

とにもかくにも、そんなこともあってマヌケ感全開の川上さんとは仲良くなり、その後も何度か高円寺などで会ったり飲んだりするように。いや〜、よかったよかった。

と、前置きはさておき、肝心の川上さんの新書。これが『パンクの系譜学』という書名で、例のPunk展と同様、思想や社会的な位置付けやらその歴史も押さえて「パンクとは何か」ってのを評したもの。パンクと聞いて騒がしい音楽とか派手な服装しか思い浮かばない人が読んだら「そういうことだったのか〜!」と、びっくりする違いないし、パンク通の人にとってもすごくいろんなシーンの背景のことなどが書かれていて面白いと思う。そもそもこの川上さん、パンクが好きすぎてマニアックなこと調べすぎて頭がおかしくなって教授になっちゃったぐらいなので、誰も知らないような情報も死ぬほど入ってる。これはすごい。

そんなわけで、さあ買った買った〜。素人の乱5号店で売ってるよ〜

<注意>川上さんは以上の文章読まないでください。