【四国奇人伝 No.68】高松のねずみ男・藤井佳之  中四国巡業④

愛媛から香川へ。そしてやって来たのは妖怪が集う魔窟の都・高松に到着。高松にはいいお店やちゃんとしたお店がたくさんあり、他の都市とも引けを取らない街なんだけど、「なタ書」という強烈な店のインパクトが強すぎて、高松=邪悪な妖怪都市の印象がどうしても払拭できない。そんな“なタ書”の店主が藤井佳之氏だ。
今回は、彼の一日を追ってみたい。

はるばるやって来ました、これがそのなタ書。古い建物の2階の店舗で、なかなかの異彩を放っているかに見えて、よく見たら周りも結構ボロい建物が並んでるので意外と溶け込んでいる。高松市の市街地の真ん中にあって、いつでもフラッと立ち寄れる便利な立地なんだけど、まさかの完全予約制の書店なのでそう易々とは立ち寄れない。そう、わざわざアポ取って店主とマンツーマンの状態で本を探す緊張感を味わえる前代未聞のシステムの店だ。
そしてこの建物の2階に巣食うのが、高松のねずみ男と恐れられる藤井氏。いつ何をしでかすかわからないとんでもないイカサマ師で、高松はおろか四国中の大バカシーンから常に遠巻きに固唾を飲んで見つめられている。
言ってることが本当なのか、大ハッタリなのか、あるいは突如何をし始めるのか、掴みどころがないため周囲の人の評価も大きく違い、「やつはメチャクチャだ! ふざけてる!」と憤慨する人から「あの人は全て計算し尽くしている天才だ!」という人まで、雲泥の差。どっちにしろ、ただ者ではないことは確かだ。

掴みどころがないやつとなれば、ひとまず懲らしめるしかない。
ということで、この日は、普段高円寺から放送している「素人の乱・残党ラジオ」をなタ書から放送するという特別企画で、この日は自分以外にもラジオチームの松本ルキツラ、池田佳穂の2名も参加して奇襲放送を行うという予定。コロナ禍の中では電話出演してもらったこともあるので、今回はその意趣返しだ。さあ、妖怪藤井佳之はどう出るのか!?

というわけで、なタ書に殴り込みをかけて突如ラジオ放送を開始! 事前に襲撃予告をしていたので、高松からも多くの群衆が押し寄せていて、早くも大混乱に!

奥のレジでとぼけた顔で座るのが妖怪藤井氏。
ラジオ序盤は、高円寺話やら藤井さんの身の上話など多岐に渡りつつも、意外にも穏便な進行で平和に進む。おかしい、妖怪藤井が穏やかにカルチャーの話とかしてる。これは何かある!!
90分番組の放送は、音楽をかけたりしつつ平穏なまま終盤に差し掛かった。

そして、番組終了30分前、どこでスイッチが入ったのか突如戦闘モードに入る妖怪! いきなり東京にケンカを売り始めたり、「なタ書より素晴らしい店があるなら教えろ!」などと挑発し始めたり、テンヤワンヤに。えっ、今かよ!
上の写真を見よ、明らかに違う態度で、かかって来いコノヤローモードに! そして、よく見たら直近で読んだ本は上方落語の本と思われる机。これはタチが悪そうだ!!
“襲撃事件”という番組タイトルで分かると思うが、言ってみればプロレスみたいなもんで、「コノヤロー」と乱闘寸前の状態から最後は適度なところで収まるのが暗黙の了解。それをあえて逆の進行でやって来てくるあたり、やはりさすがはねずみ男、一筋縄では行かない!! 天然なのか? 確信犯なのか?

ま、そんな混乱の中ラジオも終了。ラジオは後からでもstand.fmで聴けるので興味ある人は聴いてみてほしい。さて、その後はいつものパターンで、藤井さんの高松町案内コーナーの始まり! そう、藤井さんはいつもお客さんが来ると市内の面白いスポットなどを案内してくれるのだ。
さっさと後片付けをして、早く街に出ようという藤井さん。さあ、今日はどんな高松DIYシーンを見せてくれるのか!? くわばらくわばら。
荒れ果てたなタ書を後にして、我々を従えて颯爽と風を切って街を闊歩し始める藤井さん。
おーい、早いよ藤井さん、待ってくれ〜

…と思えば、早速街でヒマを持て余すギャルに声をかける。早い!! しかも、第一声でいきなり「おい、君たち。あの有名な松本哉さん本人がいるんだよ、ここに」とか言い出す。おい、知る訳ないだろ〜! ただ、ハッタリ妖怪の藤井氏のすごいところが、ものすごい堂々と言い出すので、ギャルたちも本当の有名人かと思い「誰? 誰?」と食いついてくる。藤井さんすかさず、すぐにスマホで俺の本を検索して見せて「この本、読んだことないの!?」とか大ハッタリを連発! ちきしょ〜、俺をダシにしやがって〜(笑) でも藤井さんの話術は面白いから、意外と話し込んでて、「我々はこれから飲みに行くけど、どうですかキミたちも」なんて誘ってる。
まったく、そんなハッタリで声かけたって相手にされる訳ないじゃねーか。

と、思いきや結局、飲もう飲もう、ということになり、藤井さん行きつけの居酒屋に。高松どうなってんだ!
カウンターカルチャー巡りどころか、いったいなんの飲み会に巻き込まれたかと思いつつも、まあそれはそれで面白いかと藤井さんの演説をはた目に聞きながら飲み始めると、「今日はこの松本哉先生のおごりだから遠慮なく飲んで」とかギャルたちに言い出す藤井さん。で、「えっ、いいんですか!?」と喜ぶギャルたち。コラー、なに言ってんだ〜! とは言って、巻き込まれた若い子らに金払わせる訳にもいかないので、まあまあなんとかなるでしょ、とか適当に言ってごまかす。するとすかさず、藤井氏がコップを持って「松本さん、いただきます!」と頭を下げる。うまい! 絶妙のタイミングだ! …って、感心してる場合か〜! はいはい、わかったわかった、金のこと考えたって酒が不味くなるから、こりゃもう腹括った。払えばいいんでしょ、払えば。おーい、大将、ビール3本持って来て〜!

その後、しばらくどうでもいい話で盛り上がりつつ適当に飲み、その女の子たちも次の約束があるとのことで、まんまと「松本さんごちそうさまでした」と挨拶して帰っていき、じゃあ残った人でもう少し飲もうか〜、となった、その30秒後、その時、歴史は動いた。藤井さんも「じゃ、僕もそろそろ。松本さんごちそうさまでした」と丁寧に挨拶して、なタ書の常連客や高円寺組などをほったらかして素早く出口に向かう。「えっ、藤井さん帰るの!?」と、みんなが引き止めるも、一度も立ち止まることなく「それじゃあ!」と、ビタ一文置かずに見たことない速さで帰っていった。あのヤロー、やっぱり完全にねずみ男じゃねーか! 大将、ビール5本持って来て〜!

すると大将、こちらへ来て、どっかと腰を落ち着けて飲み始める。もう閉店時間ってことで、店員さんたちは、もう呆れて先に帰っちゃう。これは長期戦の予感!
そこで大将、開口一番「いや〜、藤井さんはすごい人だよ。あんな天才はいないよ、本当に。高松の文化は全部あの人が作ってるよ、ホント。最初はどこの乞食かと思ってたけど(原文ママ)」と、ベタ褒め。なんかこれ、全員グルなんじゃないか? そういえば昔、二十歳ぐらいの時、ロシアでシベリア鉄道乗ってたら、こういう感じで次から次へいろんな役割の人が出てきて、まんまとモノ盗られたな〜。なんて思い出したけど、ここは高松。そんなはずはない。ただ単に強力な人材の宝庫に違いない! 手強い!
そして大将、ひとしきり藤井さん高評価話を語り尽くし、こっちも「なるほど、いろんな人を見てきてる居酒屋の大将がいうぐらいなんだから、こりゃ本当に傑物なのかもしれないな〜」という気になってくる。さらに大将、饒舌になってきて、いろんな思ってることを話し始めるが、酔っ払ってるのか何なのか「人間は宇宙人が作ったに違いない!」などという話になってくる。しまった、理解を超えてきた! 完全に不得手な方面への話題になってきてたじろぐ高円寺チームだが、そこへ登場したのが、なタ書の常連客の大学生の藤本さんだ。誰もが口を挟めないような大将の絶好調の話題に、時折り「でもそれって、⚪︎⚪︎のことですよねえ」とか、鋭いツッコミを入れ大将を怯ませたりしつつ互角に渡り合う。これはすごい! ま、ともあれ、酔っ払いのカオスなトークのまま宴は続き、適当なところでお開き。会計は当然全部俺。いや〜、壮絶だったけど楽しかった〜

で、翌日、藤井さんに会うと、「松本さん、昨日本当に全部払ったんですか!? ええっ? いや〜、さすが太っ腹だな〜」などと、相変わらず本心が読めない話術。そして、「昨日はあのあと大将も絶好調ですごかったですよ〜。話、時々わけわからなかったけど、仲良くなりましたよ〜」と言うと、藤井さん「えっ、そんなに長居したんですか? 俺、大将と飲んで話したことないですよ」だって。コラー、お前常連じゃないのか〜!!! うっかり話し込んじゃったじゃないか〜! っていうか、それも本当かウソか分からなくなってきた!!
やはり高松、手強すぎる!!!

と、怯んでいると、「街を案内するからついて来い」と、勝手にテクテク歩き始め、朝からまた街を案内し始める。嫌な予感しかしない。妖怪藤井に勝てる気がしないので、諦めてついていくと、藤井さん時折振り返って「『マヌケ反乱の手引書』に載ってそうな高松のオルタナティブスペースとか案内すると思ってるでしょ。そうじゃないとんでもない場所に連れていきますから。すごいものを見せますよ」と、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、またテクテク歩き始める。やはり嫌な予感しかない。

そのままこちらを振り返りもせず、迷うことなく雑居ビルの2階に吸い込まれるように上がっていく。同行しているルキツラは「人を殺しにいくみたいだ」と恐れおののく。

どこかの事務所に入るや否や、そこの事務員の人に「今日は、あの有名な松本哉さんをお連れしたので、お茶か何かを」などと、またどこかで聞いたことあるようなことを言い始める。あまりにも堂々とした藤井さんの態度にスタッフの人も急いでお茶とお茶菓子を持ってくる。読めない! 藤井さんとこの謎の事務所の関係性がわからないだけに、これは難しい! どうやらアート関係のNPO事務所らしく、なぜか我々がその事業内容などの話を聞く間、藤井氏はお茶とお茶菓子でゆっくりくつろぐ。その自然体、完全に座敷わらしクラス。
で、頃合いを見て「じゃ、そろそろ行きましょうか」と藤井さん。これ、本当に案内したかったところなのか? 藤井さんが休憩したかっただけなんじゃないだろうな。こっちの名前をダシにしてるだけに、ウロウロすればするほど自分の評判を落とすことになるんじゃないかと不安がよぎる。

次に、ゲストハウスの前を通りかかった時、これまた迷いなくスッと入る。1階にコワーキングスペースがあるところで、高円寺のマヌケゲストハウスとは違って、きれいなところだ。
「こちらが、あの松本哉さんで、ゲストハウスもやってる世界的に著名な方です」と藤井さん。出た〜!! わかったわかった、もうそれでいいよ。一応知り合いのところらしいけど、その真相は闇のまた闇。対応してくれたスタッフはまだ新人の人。藤井氏の話を聞いたそのスタッフの人からしたら、高松の最重要人物の藤井という人が世界的に著名な松本という人を連れてきたので、これは大変だと、「本来コワーキングスペースの使用は有料なんですけど、ひとまずどうぞどうぞ」とコーヒーを出してくれる。終始恐縮する高円寺組。
そして、高円寺組がそのゲストハウスの話などを聞いてる間に、「ちょっとWi-Fi借りていいですか?」と藤井さん。おい、それが目的か!
で、頃合いを見て「じゃ、ぼちぼちおいとましましょうか」と、次へ向かう。いやー、これ、俺もう二度と高松に来られなくなるんじゃないかな〜

そのあとはレコード屋さんを案内してくれたり(ここ、すごくいいレコード屋だった!)、また適当に散歩をする。

ちなみにこれが居酒屋の大将いわく「いっつも変な袋持ってウロウロしてて○○(原文ママ)にしか見えないんだよ〜」っていう藤井さんの袋。この中身を見た者は死ぬと言われている。

この藤井氏、各所で口から出まかせでツケ入ってるようにも聞こえるかもしれないけど、あながちそうでもない。確かに顔はすごく広いし、高松のみならず各地のアートやら書店やら、行政も関わる大きなイベントなどにも絡んでたりと、ただのイカサマ師ではない側面もたくさん備えている。さらに、なんだかんだと面倒見がいい面もあり、初対面の人にもよくしてあげたりすることも多々ある。例えば例のギャルに声かけた時も、変な下心あるナンパみたいな感じじゃなく、普通に話聞いたり高松のこと教えたりうどんを食べさせてあげたり(他人の金で)してたし。
とは言え、突如本当だかウソだか分からないやたらでかい話が始まったりもするし、全員がケムに巻かれる感じ。

そして最後の最後、「じゃあご飯を食べに行きましょう」と、渋い定食屋に連れて行ってくれる。ここのおかみさんがものすごく無愛想な人で、怒らせたら怖そうなタイプ。ここで例の「このお方が有名な…」作戦が始まったら「あんたなんか知らないよ!」とケンカになるに違いない。今度はどんな手を使ってくるのか、頼むから発動してくれるなとビクビクしていると、最後に藤井さん「ここは、私が」と、珍しく紳士な態度でみんなにおごってくれる。なんと! この酷い目に合わせたり合わされたり、いろんなものを巻き込んだりしつつ、最後は帳尻合わせてプラマイゼロに持っていくこの技術!!!
藤井さんさすがだなあ〜、と感心しつつ別れを告げ、ラジオのお礼などもして再会を誓って、藤井さんの後ろ姿を見送る高円寺組。
ただ、よくよく考えたら、あのおかみさんが怖そうだから怖気付いただけのような気もしてくる。

全てを計算した凄腕の人物なのか? まぐれで何もかもが上手くいく天才なのか? はたまたとんだ食わせ者の妖怪なのか?
全ては闇のまた闇。

諸君も、この謎に迫るためにも高松のなタ書に遊びに行ってみよう!

【倉敷奇人伝 No.31】川上幸之介 『パンクの系譜学』が入荷!

「Punk! The Revolution of Everyday Life」という展示が2021年ごろから各地で開催され始めた。一般的には音楽のジャンルとして扱われがちなパンクだけど、そんな単純な話じゃねえだろ、ってことで思想的な面から生き方の哲学に至るまで、もっとトータルに体系化した展示。おお、すごい!
で、風の便りによると、その首謀者は川上幸之介という人で、西の方の奇妙な大学で教授をやっているという、謎の人物。いったい何者なのか。パンクに寄ってたらいかつい怖い人かもしれないし、学者に寄ってたら小難しいつまらない人の可能性大だし、どちらにしてもあまり近寄らないほうがよさそうだ! さらに、西日本の倉敷という謎のエリアに居を構えるわ、斬り捨て御免みたいな名前してるし、何かで遭遇したら「コラー、松本〜!」と、いきなりぶん殴られるか槍で刺されるに違いない。これはいよいよ捕まったら大変だ。よし、触らぬ神に祟りなし作戦だ!!

そして昨年の夏ごろ、アジア圏で木版画やってる人たちが上野で展示をやるというので、見に行ったことがある。ただ、あろうことかその展示会場の隣がPunk展。しまった! 謀られた!
まだ見ぬ強豪・人斬り川上幸之介氏、予想するに、身長は2.5mほどで、人の頭骸骨を砕くぐらいの握力を持ち、棍棒とかギロチンを持って鬼の形相で累々と重なる屍を乗り越えて徘徊してるに違いない。しかもイベントタイトルも、レボリューション・オブ・エブリデイライフ。日々の生活がすでに革命ってことで、そんな朝メシ前に革命起こしてるような強者に見つかったらそれこそ事だ。大変だ〜、殺される〜! 逃げろ〜!!!

さて、版画展を見たあと、そのまま斬り死に覚悟でPunk展へ。しまった、防弾チョッキ忘れた! すると、「あー、松本さ〜ん!」と声がする。振り向くと囮(おとり)風の男が笑顔で物販コーナーに立っている。しまった、囮だ! …と思ったら「川上です!」。ええっ、この人が川上さんなのか〜!! 話が違う! 優しそうな人じゃねえか。騙された!

↑左から、版画展企画のエガミ教授、囮の川上さん、自分、東南アジア圏のパンクに精通する高崎さん(彼も見た目はイカツイけどウサギのように優しい人)。

 普通にめちゃくちゃいい人で、自然な流れで「じゃ、このあとアメ横で飲みましょう」ということになり、他の友達も誘いみんなでアメ横の居酒屋へ。飲みながら川上さんともいろんな話をして盛り上がってると、よく見たらソフトドリンク飲んでる。「あれ、川上さん、お酒飲まないんですね」と聞くと、「いやあ、ちょっと諸事情あってやめてるんですよ〜」とのこと。こ、これはやはり余程の悪事を働いたに違いない。クワバラ、クワバラ。

まあそこそこ飲んだので、ぼちぼち帰りましょうかということに。川上さんも高円寺の近くに泊まってるとのことで、高円寺まで帰るという。ただ、こっちは迂闊にも車で来てしまっていた。というより、出先で飲みそうな時はたいてい店の軽バンで行って、飲んだらそのまま車で寝て翌朝帰るのがいつものパターン。なのでこの時も車を駐車場に停めてた。なので、「いやー、帰りたいんですけど、飲んじゃったし今日はここで寝て帰るので、川上さんお先にどうぞ」と挨拶すると、「いやいや、僕運転して行きますよ! 任してくださいよ」と、アメ横にいたせいか魚屋みたいにノリがいい。ただ、マニュアル車だったので「マニュアルだけど大丈夫ですか?」と聞くと、「大丈夫です!」と二つ返事。景気いいね、どうも。マニュアル車って最近はなかなか乗りこなせる人少なくて、以前も友達に車貸して2回ほど壊れて返ってきたことがあるので、一瞬心配になってしまったが、このアメ横のおっちゃんと化した川上さん「へい!マニュアル一丁〜」って勢いで、これなら大丈夫そうだ。疑って悪かった! よっしゃ、じゃあ高円寺へ帰りましょう〜

こっちは酔っ払ってるので助手席で、悪事に悪事を重ねたおかげでシラフの川上さんが運転席。さあ、出発〜! すると、ものすごく雑なクラッチワークで荒っぽく発進! おお、さすがパンク。それとも、これが全てを知り尽くした真の走り屋のテクなのか!? 駐車場を抜けて大通りに出て最初の信号などでは、青信号とともにものすごい空ぶかしで周囲を威嚇し、左右の車を先に行かせる余裕を見せた後、突如クラッチを繋ぎロケットスタートで急発進して追い上げる!! おお、プロの走り!!
よもやと思って、念のためふと運転席の川上さんを見ると、ものすごい脂汗をかきながら一点を見つめて運転してる。で、「いや〜、教習所以来30年ぶりですよ、マニュアル」と、ぼそっと呟く。コラー、素人じゃねえか!! 何やってんだ〜!

しかし、ここでうろたえてはみっともない。「車が故障したら大変だ」なんてみみっちいい魂胆を見透かされるなんてみっともないことはできない。ここは大きく出て、車の5台や10台大破したところでどうってことない余裕を見せつけて、ひとつ人間のデカさを知らしめるしかない。なんせ相手は革命エブリデーの強豪中の強豪だ。みくびられないようにしないとヤバい!
車の大破炎上なんて朝メシ前で、せっかくだからベンツやフェラーリも巻き込んで10台ぐらい一気に行きましょうや、…っていう空気感を出しつつ、小声で「クラッチ切って」「そろそろ4速に」と、こちらも脂汗を隠しながらアドバイス。さらに、動揺してないことを示すためにもコッソリ手のひらに人の字を書いて飲み込みながら「いやあ、川上さん。今度は倉敷に遊びに行きたいですね〜。2速、2速」などと不自然に世間話を振り、川上さんも「そういえば松本さんの本読みましたよ。面白かったなあ〜。…あっ!」などと、真っ青な顔でハンドルを握る。

謎のチキンレースと化した二人でそのまま平静を装う不自然な世間話をしながら車は進み、渋滞気味の上り坂に差し掛かると、まんまと赤信号になり、よりによってその中腹で止まる。後ろにはピッタリと高そうな乗用車が止まる。こ、これは…。絶体絶命の坂道発進の危機を薄々感じつつも「いや、しかしなんですねえ、昨今の政治は…」などと、話題に窮して明らかに二人とも興味のない会話が始まり、一方で親の仇のようにサイドブレーキを強く引く川上氏。それも束の間、青信号とともにブワーーーンというとんでもないアクセルを踏み込んだ爆音とともに一切発進せず、生まれてこの方見たこともないような白煙がもうもうと立ちのぼり、鼻をつくようなゴムが焼けたようなにおいも上ってくる。やばい! ただ、自分も川上さんもビビったら負けの痩せ我慢の権化状態になってるので、お互い無理に大きく構え、あたかもいつもの出来事のように振る舞いつつも「ああー!」「ワッハッハ」「いいですね〜!」「今日の煙はちょっと多いかな〜」などと叫び声をあげて不自然に盛り上がる。ただ、これハタから見たら完全にシャブ中の爆走車にしか見えないので、すでに周りの車は恐怖におののき、だいぶ車間距離をとり、ものすごく遠巻きにゆっくりと追い抜いていき、おそるおそる抜いた瞬間に急加速で蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

ともあれ、辛うじて坂道を脱出した我が軽自動車は、残りの行程もなんとかこなし、ボロボロの敗残兵のような感じになりながらも九死に一生を得て高円寺に到着。もちろん、お互い何事もなかったかのように「意外と近かったですねえ」「またドライブ行きましょう」なんて心にもないことばかり言いながら「も、もう一杯飲みますか」と、高円寺のなんとかBARへ。

さて翌日、その車を動かそうとすると、ウンともスンとも言わない。エンジンはかかるものの、クラッチが切れず、ギアも入らない。早速、毎度おなじみスズキ自動車の浦井工場長に連絡すると、「あ、それクラッチ焼き切れましたね。交換ですね〜。レッカー呼んで持ってきてください」とのこと。しまった〜! 痩せ我慢するんじゃなかった〜!

とにもかくにも、そんなこともあってマヌケ感全開の川上さんとは仲良くなり、その後も何度か高円寺などで会ったり飲んだりするように。いや〜、よかったよかった。

と、前置きはさておき、肝心の川上さんの新書。これが『パンクの系譜学』という書名で、例のPunk展と同様、思想や社会的な位置付けやらその歴史も押さえて「パンクとは何か」ってのを評したもの。パンクと聞いて騒がしい音楽とか派手な服装しか思い浮かばない人が読んだら「そういうことだったのか〜!」と、びっくりする違いないし、パンク通の人にとってもすごくいろんなシーンの背景のことなどが書かれていて面白いと思う。そもそもこの川上さん、パンクが好きすぎてマニアックなこと調べすぎて頭がおかしくなって教授になっちゃったぐらいなので、誰も知らないような情報も死ぬほど入ってる。これはすごい。

そんなわけで、さあ買った買った〜。素人の乱5号店で売ってるよ〜

<注意>川上さんは以上の文章読まないでください。


【高円寺奇人伝17】シム二等兵、ついに徴兵に取られる!

シムくんという高円寺をウロつく酔っ払い青年がいる。彼は謎の飲んだくれで、高円寺のいろんな店をウロチョロ飲み歩いており、気付いたらいつの間にかシムがいて驚いたり、で、話の流れで「そうだよなあシム」と振り向いたらすでにどっか別の店に飲みに行ってたりして、高円寺の座敷わらしと恐れられる人物。
そして、無駄に学があるので急に誰も興味のない難しい話をし始めるのが唯一、いや、数多ある欠点のひとつ。ふらっと飲みにきたトボけた顔したオッサンに突如難解な話をし始めて「何言ってるかわかんねえよ!」と怒られるシムの様子を何度見てきたことか!

さあ、そんなマヌケな飲んだくれのシムくんだが、なんとついに赤紙、つまり召集令状が来てしまい、なんと軍隊に取られることに。おーい、こんな飲んだくれ軍隊じゃ絶対に役に立たないぞー! しかもこのシムくん、かねてより「徴兵なんて意味ない」「戦争の練習なんてしたくねえ」と言っていたので、こりゃ気の毒だ〜

徴兵制なんてあったっけ、と思うかもしれないけど、このシムくん何を隠そう韓国から来ており、本国から赤紙が来たっていうことだ。韓国では約2年間の兵役義務があり、これを避けて通るのは至難の業。だいたい二十歳を超える頃になるとみんな続々と兵役に取られていくわけだが、シムくんは言わずと知れた、油断しまくりの天然の大バカ。兵役なんてバカバカしいことやってられないから国を出るよと、留学で日本に来る。「しばらく日本にいるうちに徴兵制なんていう時代遅れなものなくなるだろ」と、完全に油断して飲みまくって遊び歩き始める。ちなみに上の写真は高円寺初登場の19歳ごろの時。

無駄なインテリ気質は生まれつきで、日本に来るとまずは東京芸大で研究生になり、そのあとは東京外大に移籍し、万人には理解不能な難解で無駄な研究にいそしみ始めるシム。さらに地頭(じあたま)がいいのか日本語は来日直後に一瞬でマスターし、その辺の日本人の日本語力を超す勢い。明日は博士か大臣か!? どこまで成長するんだ、シム!!!

と、思ったのも束の間。そう、ここは東京の高円寺。無駄な知識ばかりがどんどん増えていくシム。飲み屋の会話でも突如、「いや〜、でも1987年の阪神タイガースのスタメン4番は⚪︎⚪︎だったからな〜」とか「バブルの頃のタクシー初乗りは⚪︎⚪︎円だったしね」とか言い出す始末。なんでそんなこと知ってるんだ〜!!!! さては、ロクに研究もせずに飲み歩いてるな〜! 予想通り、大学ではひたすら落第を繰り返す。

案の定飲みまくるシム。しかも貧乏すぎるので、どんな酒も平気で飲む。

ただ、よくわからない強い酒を飲んで酷い目にあうことも頻繁。

そして、酔っ払いすぎるとめんどくささが発揮されてきて、「また始まった!」と、周囲の人が距離を置き始め…

勝手に潰れて寝るのがいつのもパターン。ちなみに上の写真の左にいるのは台湾の料理人・トニー。彼も高円寺にはよく遊びに来るのだが、シムとはのんべえ子弟コンビのようになって、シムがだいたい潰れている。そして写真のテーブル上のメガネは、シムが酔っ払って「メガネがない!メガネがない!」と千鳥足で騒ぎ始めて最後に自分のメガネを踏み、黄色いガムテープで補修したもの。

さあ、そんなどうしようもない飲んだくれシムが7〜8年の高円寺生活を経て、軍隊からのお呼び出し。いや、それ無理でしょ。20歳当時ならまだしも、どっぷりと高円寺のんべえチームに入って各地を飲み歩いてるダメ人間が、人と争ったり武器や殺人の訓練なんてできるわけないじゃねーか〜!

さすがにこれは気の毒だってことで、なんとか兵役に行かなくて済む手はないものだろうかと、高円寺の酒飲みたちで頭を捻り「巨額の財を稼いで賄賂わたす」「偽装結婚しかない」「兵役検査前に醤油飲で失格する」など、徴兵回避の案を出すがなかなか名案が出ない。

で、最後に出た奇策がこちら!

秘策! “あ、すいません! 北と南間違えました”作戦!
かつての日本の徴兵の時みたいに、寄ってたかって日の丸の旗におせっかいにも寄せ書きして、軍隊に行かざるを得なくなるあれ。北朝鮮の国旗にみんなで寄せ書きして持たせ、意気揚々と徴兵検査に行って「あっ、南でしたか! 日本長かったんでついウッカリ…、こいつは申し訳ねえ」なんてことになれば、検査官から「おまえ、もう帰っていい」ってなるに違いない! これは完璧な作戦だ!
さっそく、Amazonで980円で旗を手にいれ、シムも毎日飲んだくれる高円寺「なんとかBAR」に寄せ書きブースを設置。貼ってみたら貼ってみたで、ものすごい威圧感。店長の小泉くんも「これは思ったよりでけえな〜」とビビる。
焦った小泉くん、一見さんが入ってきてギョッとするタイミングでいちいち「あ、いや、これは別に北朝鮮支持って意味合いじゃなくて、友達が韓国に軍隊行くから北と南間違えたってことで追い払われるんじゃないかってことで…」と、聞いたら余計わからなくなるような説明を毎回丁寧に早口で説明。

気づいたら寄せ書きの山。みんな「軍隊行かないで〜」「早く高円寺帰ってきて飲もう!」「戦争反対」「世界平和」など、およそ出征兵士に送る寄せ書きとは思えない落書きの山で、そもそも北朝鮮の旗。そして、気まずそうな顔で「こんなの見つかったら捕まっちゃうよ〜」「韓国持っていっても親にも見せられない!」などと気まずそうな顔で頭を抱えるシム。

聞けば、「国旗に字を書くって普通は不敬だから外国ではあまりやらないよ」との話も。なに〜、知らなかった。すでに死ぬほど書いてる! 北朝鮮悪かったよ〜、怒らないで〜。日本ではこれ普通なんだ〜〜〜
ま、そんなこともありつつも、寄せ書きは続く。

「なんとかBAR」はさすが高円寺。深夜0時を回る頃になると混み始める。深夜帯には立席の超満員に。っていうか、北朝鮮の国旗をメインに貼ってここまで盛り上がってる飲み屋なんて、一日だけとは言えここしかないだろ〜

徴兵制のある台湾や韓国に行くと、たまに友達の誰かが兵役に行くとか言って最後の飲み会なんかに出くわすことがよくある。が、日本で普段顔を合わせる奴が徴兵に行くっていうのはすごく新鮮。こんな感じなのか〜。高円寺の人たちからしたら、2年間遠くに行くと聞いたら懲役を思い出すのか、みんな口々に「何にも悪いことしてないのに2年なんてひどいよな〜」「早めに出て来れるように頑張れよ〜」「同じ房の人と仲良くやれよ」「面会行くよ」とか声かけてる。

これ持って帰ったら絶対逮捕だと怯えつつ、みんなからの大量の送別の寄せ書きに感動し、非常に複雑そうなシム。さあ、果たして“北と南間違えた”作戦は成功するのか!? 軍隊やら戦争なんて、所詮は金持ちや権力者同士の揉め事に過ぎない。こんなバカバカしいものに付き合わされるのはどこの国であってもまっぴら御免だ。ぜひうまく回避してもらいたい。本人も結果はどうあれ必ず高円寺に戻ってまた毎日飲みたいとのこと。果たして無事に高円寺に戻って来られるのか!?
シム、健闘を祈る!!

【長野奇人伝19】西澤尚絋 〜オレの手でマヌケ宿泊所を守る!

長野にジローさんという謎の大御所がいる。以前リサイクルショップをやっており、同業のよしみで知り合って以来の付き合いだ。長野市のはずれの安茂里という一帯で好き放題に遊びながら仕事もしている人で、ま、言ってみれば地方豪族みたいな感じ。

長野山岳地帯に居を構える地方豪族のジロー氏

かつては、長野で行われた野外フェス「なんとかフェス(2009~2011)」にも力を貸してくれたり、近年のアジア圏との交流の際も台湾などまで足を運んだり、高円寺にもちょくちょく遊びに来たりと、何かと関わりも深い。

ジローさんの店にて。いぶし銀の貫禄

さて、今回はジローさんの話ではなく、もう一人の長野重要人物、西澤くんだ。豪族ジロー氏の配下、いや手下として活躍し頭角を表し、そのマヌケ感全開の雰囲気で存在感を出している西澤氏も、かつてのなんとかフェス時代以来の登場人物。好奇心旺盛な西澤くんは、長野市内のライブハウスや変わったスペース、イベントなどにも顔を出したりして、長野地下文化圏周辺もウロチョロしていて意外と顔が広い。そのため、安茂里の山中から長野市内に勢力拡大を虎視眈々と狙う豪族のジローさんからも一目置かれている。

近年も、長野に遊びに行ったり、西澤くんが東京に来たときはよく飲んだりもしていた。

西澤氏。ぱっと見の風貌は完全に農協青年部

で、この西澤くん、なにを隠そう高円寺マヌケ宿泊所の第一号のお客さん。2013年ごろ、まだ正式オープン前にいろいろ準備している頃、たまたま高円寺に来る用事があり、「ゲストハウス始めるって聞いたけど、もう泊まれますか?」というので「まだ準備が完全じゃないけど、知り合いだったらいいよ〜」となった。2021年1月の廃業までの間に5000人以上が宿泊した中の、記念すべき第1号。

そして、その西澤くん、マヌケ宿泊所が廃業したと聞いてとても残念がる。先日、長野に行った時もその話になり、「いや〜、海外の仲間たちがいつかまた来る時に備えて、なんらかの形で残しておきたいんだよね〜」と相談すると、「なんとかします」と、西澤氏。おお、これは心強い言葉!

そして数日後、東京に戻った後に西澤氏から送られてきたのがこの写真!

こ、これは! あのジローさんの領地内の山の中! 聞けば、解体現場でいらなくなった小屋をもらってきて、ここに移設したとのこと。完全に風雲たけし城の天守閣だ!!

おお、でかい!! まさに建設現場の仮設事務所! これは便利そうだ!

階段を登ると、なんと!!!

ギャー、マヌケ宿泊所!!!!

「いや〜、オレとジローさんでこの看板描いたんですよ」と西澤氏。まさかの長野移転! マヌケ宿泊所は死んでいなかった!

ギャー!! 畳!
これは、現場作業員たちが休憩の時に車座になってお茶を飲む、あの場所だ!! もしくは百姓一揆の密談の寄り合いに使われるお寺の離れと完全に同じだ!!!!(見たことないけど、たぶん同じ)

うわ〜、最高。これはこれで楽しそう〜!!

ということで、コロナ襲来によって敗退し、高円寺で滅亡したマヌケ宿泊所だが、長野の豪族ジローさんの庇護の下、西澤氏がマヌケ宿泊所の所長に就任し、長野の山中から再度東京進出を狙うということになった。

いや〜、楽しくなってきた。っていうか、そのうち遊びに行ってみよう! なんとかフェスもまた久々にやりたいしね〜

これは長野に目が離せなくなってきた!

高円寺奇人伝62 小泉兵義

高円寺。それは魑魅魍魎が蠢く四次元空間のような世界。世界的に街の開発が進み、各地が無機質な街並みに塗り替えられているにもかかわらず、頑固一徹・高円寺の街のみは、あいも変わらず完全に意味不明の世界。
昭和感満載のレトロな雑多感ある町などは、いろんなところにある。しかし、高円寺の恐ろしいところは、続々と謎の店やスペースが新たにでき続けているところだ。こんな街は日本でも稀有な存在だ。

そこへ、また一人の男が立ち上がった。小泉兵義氏である。
この人物が、この群雄割拠の高円寺の商店街の中で、満を持して新スペースを開くことを決断したのだ。

小泉兵義氏近影

社会の理不尽を許さない正義感の強い社会派の小泉氏は、常に巨悪に立ち向かい、己のポリシーを貫くハードボイルドな人物だ。多くの人が見て見ぬ振りをするような政治的な問題にも臆することなく声をあげ、しかも常に裏方に回りつつも、その崇高な理想を求める姿は誰にも止めることはできない。

そして一方、厨房に立つときは無駄口は一切聞かず、無口のままイタリアンからメキシカンまで各国料理を巧みに料理し、各種カクテルをも変幻自在に作る料理人の側面も持ち合わせている。
そんな小泉氏が、ついに自らの店舗を持つという決断をしたことに、高円寺の各界は戦々恐々と固唾をのんで注目した。今まで「高円寺はダメ人間の掃き溜め」などと好き放題言われていた高円寺の汚名をついに晴らす時が来たのではないか? バカにされながら高円寺で死んで行った死屍累々の無念に一矢報いることができるのではないか? 青山、六本木、銀座、赤坂などに出しても全く引けを取らないような名店が登場するのではないか、と、そんな期待を一手に集めた!

そして、10月5日。ついに、そんな明日の高円寺の流れを決めるようなグランドオープンの日を迎えた。

が、意外とショボい店だった!!!!!

なんだこりゃ〜。完全に下町の立ち飲み屋じゃねーか!
カウンターはその辺から拾ってきたようなベニヤ板がカラーボックスの上に乗ってるだけ。それが店主を囲むようにコの字型に並んでるという、吉野家と完全に同じレイアウト。店主小泉くんの座る椅子はもちろんビールケース。
古着屋時代の内装のままのため、壁から棚から真っ白。おまけに天井の照明も真っ白の蛍光灯なので、光の量はファミリーマートと同じぐらいで、万引きしたら3秒でバレる明るさ。

上の写真のように、ハードボイルド感0%で子供のようにご機嫌の小泉氏(左下)。

メニューはレモンサワー250円、ビール大瓶550円など。こりゃ、確かに銀座や赤坂のやつらが腰を抜かす価格帯。異常に明るい狭い店内で250円の酒を飲みまくるという、恐ろしい状態だ。でも、これどっかで体感したことあったな〜、と思ってたら、ふと思い出したのが山谷とか西成にある酒専門の自販機コーナー。明るいうちからニコニコしたおっちゃんたちが集ってきて、自販機のワンカップとか飲んで居酒屋化してる、あれだ!!!! この蛍光灯、白い壁、安酒の立ち飲みスタイル。同じ光景だ!!!!

そして、特に期待もせず、ふとフードメニュー、いや壁のお品書きの短冊を見ると、小さい読みにくい字で「キャビア」。なに!!?? そうか! やはり小泉氏、前面には立たず、陰でそっとキラリと光るものを出してくる、あの感じなのか!? さ、さすがだ!!!! そうきたか。
こっそりと小声で「あ、キャビア?」とつぶやいてみると、小泉氏もすかさず反応し「あ、それニセキャビアだから300円ね! キャビアもどき。味は似たようなもんだよ!」と、浅草の立ち飲み屋と全く同じ返答。しかもよくよく見たら、他のメニューも全部読みにくい字。チキショー、騙された!

でも、そうやっていながらも実は裏メニューがあったりするのが、この手の店の卑怯なやり口。そりゃそうだ、内装もメニューもこれだけだったら、本当に自販機コーナーと同じじゃねえか。なんかひと工夫考えてるんじゃないか? いや、そうに違いない。ずるいね、また。わざとこんな自販機コーナーみたいな内装にして、裏でこっそり隠しダネ出そうなんて。さてはそうやって人から尊敬されたりモテたりしようなんて目論んでるんじゃねーだろうな。そうはさせねーぞ、こんちくしょう。

「マスター、得意のパスタとかナチョスとかないの?」と、ちょっと聞いてみる。すると小泉氏「ないよ。めんどくさいじゃん。こんな厨房じゃできねーし」だって。ねーのかよ。 コノヤロー、また騙された!!

高円寺の商店街の路面店。しかもコンビニより明るい照明。目立ってしょうがないので、通りがかりの知り合いやら、飲む場所を探してウロついてる酔っ払い、ガールズバーの仕事帰りの女の子、近所で店やってる人、二十歳そこそこのヤンチャな奴ら、バンドマン…。完全にザ・高円寺な人々がどんどん立ち寄って飲んでいく。
みんなしみったれた飲み方は好きじゃないので、「マスターも一杯飲んで!」と、1000円札を出す。ところが、変なところで急にカッコつける悪いクセがある小泉氏は「僕は〇〇しか飲まないから、ちょっと高いよ。いいの?」と、急に訳のわからない酒の名前を出して勝ち誇ったようにクールに言い放つ。一瞬怯んだお客さんも「いいよいいよ、開店祝いだし、飲んじゃって!」と景気がいい。ま、高いって言っても聞いたら400円。確かにレモンサワー250円に比べれば確かに高い。
なんだか薬酒のような味のする謎の西洋の30度以上の強い酒。「これは薬だから、いくら飲んでも俺は大丈夫なんだよ」と、謎のハッタリをかまし始める。「じゃ、私も一杯おごります」「じゃあ、俺もおごっちゃおうかな」と、小泉氏の前に大量にグラスが並ぶ。冷静な人は「いや、やめたほうがいいよ。こんな飲んだらひっくり返るよ」と諭すが、「大丈夫大丈夫。これ薬だから。逆に目が覚めていいんだよ」と、やはり自販機コーナーな会話。

で、その怪酒を6〜7杯立て続けに飲んだ後の小泉氏。いきなり訳のわからない踊りを始め、完全にヘベレケに!!
周りからは「ほら〜、大丈夫?」「店閉められるの?」と心配されるが、「大丈夫、大丈夫。全然問題ない…」と、まな板を落としたりカウンターの板をひっくり返しそうになる小泉氏。もはや直立も怪しい状態に!!!
やばいやばい、このままぶっ倒れるという、まさに自販機コーナーの定番コースか!? 急にみんなが心配そうに声をかける。初日からノックダウンなのか!?

すると!!!!
突如、大爆笑し始め、饒舌にいろいろ話し始める! おお、不死鳥のように蘇った!!!! 恐るべし、小泉!!!! あの酒は本当に薬と同じなのか!?
みんなもほっと胸をなで下ろす。いや〜、よかったよかった。

いや、やっぱりダメだ!! 地面に座り込んだ!

そして、立ち上がるか寝るかの瀬戸際で自分との死闘を繰り広げる小泉兵義! 「全然余裕だよ。まだまだ行ける!」と、蚊の鳴くような声で、まだしぶとく大口を叩く。パンチドランカーならぬただのドランカー。立て! 立つんだ兵義!!

ダメだったか〜!
コテっと寝に入る小泉氏。
「あ〜あ、マスター寝ちゃったぞ」とみんなで店を片付け始めるお客さんたち。風邪ひかないように毛布と枕を持ってきて、店をあらかた片付けて、ひとり、またひとりと帰っていく。

そして、小泉氏ひとりを店に残し、静かにシャッターを閉めてお開き。小泉氏は、このまま朝まで深い眠りについたのだった。

そして翌日、「ここはどこだ!? 俺はなんでここで寝てるんだ!?」とものすごい驚いて飛び起きたとのこと。「昨日大丈夫だった? 今日は大丈夫なの?」と尋ねた人がいたが「今日? 開けられるわけねーだろ」と一言を残し、ボロ雑巾のような姿で帰宅の途についたという。

そして開店第2日目の10月6日。このシャッターが開くことはなかった。開店初日で飛ばしすぎて、1日のみで閉店。また高円寺に新たな伝説が刻まれた。果たして、この固く閉ざしたシャッターが再び開くときがくるのか?

「小泉自販機コーナー」。明日から毎日、生きてるかどうかをみんなで様子を見に行ってみよう!

小泉自販機コーナー
杉並区高円寺北3-4-12

北アジア奇人伝 No.8 アラスカの怪人 Seth

アラスカ怪人のSeth氏。神社の鈴紐みたいな髭が初詣みたいでむやみにめでたい

高円寺に謎のガイジン、Seth(セス)氏が現れるようになったのが、2018年の暮れ。なんとアラスカから来たという! おお、アラスカ! 現在はアメリカの一部分だけど飛地の上、実は昔はロシア領。しかも歴史的には、先史の時代にアジア北方民族がシベリアからアラスカに渡って定住し始め、アメリカ大陸の先住民のルーツになったということもある。アメリカだかユーラシアだかも曖昧だし、東洋か西洋かも曖昧。いいね〜、こういうところには面白いものがあるに違いない! それに地図上で考えても、北海道から北にサハリン(樺太)経由でシベリアを通って海峡を渡ればすぐアラスカだ。これはもう北アメリカであると同時に北アジアとも言えるポジション。近い近い! 近年爆発的に拡大しているアジア圏の大バカな奴らの交流圏に入ってきてもおかしくない! これは楽しくなってきた!!

余談だが、ロシアの東の最果てウラジオストクも同じ。現地では中央から僻地僻地とバカにされて心細い思いをしているが、よくよく考えるとモロに東アジア圏内で、実は地図を見たら日本海の新潟の対岸。このウラジオストク作戦、現在も進行中だが、アラスカも似たような感じかもしれない。

さて、このSeth氏。別にアラスカから来たから面白いというわけじゃない。こいつ自体がすでに相当やばい。まず中国語がペラペラ。おかげでアジア圏のいろんなところで容易に友達ができるので、ヒマを見てはアラスカから南下してアジア圏をウロチョロしまくっている。というか、翻訳などパソコンがあればできる仕事をしているので、永久に放浪してるんじゃないかってぐらいアラスカに帰ってない。本人も「アラスカなんもねーよ。寒いし冬暗いし」とのこと。うーん、イメージ通りだがちょっと行ってみたい。

しかも、別に観光で回ってるだけじゃなく、アジアのDIY文化圏、地下文化圏、マヌケ文化圏などをひたすら渡り歩いているので、やたら詳しい。そういえば、6月に香港のデモに参加しにいった時も、現地でSethから「おお、いま香港ウロウロしてたところ!」と連絡が来て、行動を共にした。うーん、手強い! さてはこいつどこにでもいるな!? 最近はしばらく高円寺に滞在してたんだけど、その時も中国のこの街にはこんな面白いスペースがある、とか、ミャンマーのどこどこの村にはこんなすごいグループがあってやばい、などの誰も知らない情報を異常に知ってる。そんな時、Sethが「場所どこだっけな〜。確かこの辺に…」と、おもむろに出した自分のスマホがやばい。「おいSeth、ちょっと待て! なんだその地図!!」と、すかさず見せてもらったのが、下の写真。

これはすごい。あまりにウロウロしすぎたため、アジア地下文化圏の情報量がすごい。もはや生き字引! これ全部遊びに行った面白い場所だとのこと。やはり、資料やネットで研究してたくさんのことを知ってる人の情報ってほとんど役に立たないんだけど、Sethの場合は実際にウロチョロして現地のやつらと遊んで知った情報だから、そこの雰囲気や人の感じなども含めて知ってるのがすごいし、情報としてもすごい有用だ! しかも、高円寺にいて毎日遊んでいる時も、アホなことばかり言ってたり、大バカなノリが最高なので、そのSethがオススメの場所なんだから、この信頼感はでかい!

マヌケゲストハウスのリビングにて

高円寺のマヌケゲストハウス滞在中も、中国人や台湾人、韓国人、高円寺人などが交流する中も、なんの違和感なく会話に入って遊んだり情報を交換しまくるSeth。さらに、当然英語も話すので、欧米から来てる英語しか話せない人ともうまくつなぐ橋渡し役になるので、Sethの存在感はでかい! う〜ん、無駄に未知のアジア地下文化圏を渡り歩いている貫禄か!

そんなSethも、年の瀬も押し迫ってくると「盆暮れ正月ぐらいは里帰りしないとまずい」と、中国語で話し、アラスカの里へ帰っていった。「近所(アジア全域のことだと思う)で何か面白いことがあったらいつでも行くから誘ってくれ」とのこと。いやー、アジアの北端からこれまたすごい奴が現れた!

中国奇人伝 No.85 芸術無法者、厲檳源

数日前、中国の芸術系の知り合いから「高円寺に遊びに行くよ〜」との連絡あり。芸術家やキュレーターの仲間と数人で来日中で、北京や成都から来ているという。新宿に宿をとっていると言うが、高円寺に来て一緒に飲んだりしてるうちに、そのうちの一人が「ここいいね。明日から高円寺に宿移すよ!」と、早速、翌日にも高円寺にまた舞い戻ってきた。やたら行動が早い! そう、その彼が厲檳源(リー・ビンユエン)氏だ。

2泊ほどの高円寺に滞在中、普通にアホな話をしながら飲んだりしていたんだけど、とあるタイミングで「そういえば、俺の作品見せてなかったね〜」と、スマホを取り出し作品を見せてくれた。自分としては本来そこまで芸術に興味がある方じゃないし、実は見てもチンプンカンプンだったりして、反応に困ることも多い。しかし、まあこのマヌケ感全開の厲(リー)さんだから何かしらふざけたものに違いないと、恐る恐るその映像を見てみると…

いきなりこんな感じ。なんだこりゃー!!!!! 花火大会級の超強力打ち上げ花火を水平にぶっ放しまくる映像!! やべー、超楽しそう!!! 景気良すぎる!!!!

どうやら「ドブ川の春」という名の人をおちょくった作品。花火が水面で炸裂しまくるから、四方八方に飛び散ってとんでもないことになってる! で、この作品、同じ日の夜中にも再度行われており、真っ暗な夜がまたすごいキレイ!!! そして深夜にもかかわらず爆音と火花が飛び散る!! すげー!

しかも無許可で勝手にやってるとのこと。聞いたら「申請? なんで?」みたいにケロッとしてる。別に通報も入らないし、警察も来てないって。すごい! あと、映像を見ればわかるけど、通行人が一切興味なさそうなのがいい。車とかもたくさん通りかかるんだけど、大量の火器を轟音と共に炸裂させまくってるのに、そのまま素通りしちゃう。

いや〜、わかる! この中国人の反応! 中国って人が多すぎるからか知らないけど、路上でとんでもないことが起こってもみんなチラッと見る程度で「なにやってんだ、こいつ」ぐらいの感じでそのままどっか行っちゃう。でも冷たいわけじゃなく、ちょっと話しかけるとみんなすごい優しい。逆に、中国の路上で、人に対して「さあ、みなさん、これから何かやりますよ〜!」みたいな感じでやるとみんな足を止めてすぐに人だかりになる。どっちの状況も日本とは全然違うな〜、この感じ。

ほかの作品も、とんでもないのが多く、北京の通勤ラッシュの時間に地下鉄内でサラリーマンの格好をして歯を磨いたり髭を剃ったりし始め、挙げ句の果てには大量の水を用意していてタライに水を張って顔を洗い始めたりっていう、これまたふざけた作品。ほかにも、北京市街地を裸で巨大な十字架を担いで走り回ったり、何本もの包丁を装着した原チャリでアスファルトに触れて火花を散らしながら北京市街を疾走したり。あるいは、道路の真ん中で爆竹を投げまくって車や自転車が通れなくなるというとんでもない作品も。これ面白いのが、車を止めてずっと終わるの待ってる人とか、うまいこと避けて行く人とか、全く気にせずに炸裂する爆竹の中を何事もないかのように直進していく人などの様子が超面白い。こんな周りの様子を撮れるのも中国の街の文化ならではの反応だ。最高、面白すぎる。

おそらく日本だったら、別になんの迷惑も被ってないのに通報する人とか、「迷惑だ」とか言ってなぜかネットで同意を求める謎の人とか、「通報入ったんでやめてもらえますか?」などと理由になってない理由で制止に入る謎の警官とかが続出する。ま、これじゃ路上では何も文化は育たないね。そういえば、日本も80年代90年代ごろまでは街頭で無茶苦茶やれたところもあるので、文化は育っていたが、それ以降政府が規制を強めた結果、路上文化は衰退の一途をたどる。惜しいな〜、行政にもうちょっと注意するところと目をつぶるところを区別できるセンスがあればね〜

中国は、政府は超厳しいし政治的自由はかなり厳格で政府の抑圧も半端じゃないけど、それさえ除けば街の様子に関しては中国は超自由な世界。最近、中国の芸術はすごい面白いのが続出してるのはこういう理由がある。いや〜、これはこれからも中国芸術界はとんでもないことになるに違いないから、今後も目が離せない!!

巨大な十字架を担ぎ、北京市内を疾走する厲さん

その後はバイクに乗り換えてさらに疾走

ということで、高円寺でも遊びまくって帰った厲檳源氏。いつか高円寺でも何かやろう〜、と約束し去っていった。いや〜、久々にこんな気持ちのいい大バカに会った! また帰ってきてね〜!!

上海奇人伝 その① 張小船

NO LIMIT JAKARTA が開催されている現在も各地からいろんなマヌケな人が登場している。今回はそんな中でアジア圏でもトップクラスにマヌケな人物を少し紹介してみよう。

数年前から高円寺にもよく遊びにきてる、中国上海から来ている小船。彼女は基本的にアーティストで意味のわからないことばかりやっており、少し前には中国人観光客が大量に訪れる真冬の北海道で爆買いの中国人に雪を売るというバカすぎる企画を決行し、高円寺にもそのバカの名を轟かせた。雪を見たことがない南方の中国人が、すぐに水になって空気になってしまうことにも気付かずに間違って買っていったという。北海道で中国人が中国人に雪を売るのはすごい!

雪を売る小船。完全にイカサマ師だ。

さて、まず余談だけど、自分ジャカルタでパスポートを紛失! パスポート入りのカバンを放ったらかしたまま飲み屋で酔いつぶれて寝ていただけでカバンが消えていた。う〜ん、まさかなくなるとは!

ということで、ジャカルタからバリに到着してすぐに、警察署に紛失届けを出しに行く。海外の警察署って怖いから嫌なんだよな〜

一番右の人なんて棍棒持ってそうな勢いだ

さて、そこで飛行機が同じだった例の小船もついて来てくれたんだけど、怖い顔をした警官たちもマヌケな顔をしてウロチョロしている小船をみて「なんかマヌケなやつがいるぞ」という感じに。すると、人を殴りそうな顔をしている警官たち、実は怖いのは顔だけで、実際は超マヌケなやつらだった。で、いきなり「ちょっとそこの彼女、ご飯でも食べなさい」と、なぜかご飯を勧めてくる。おお、なんだその悪運の強さは!

意外と優しいおまわりさんたち

自分も少しつまむ程度にもらったが、いろいろ書類を書かないといけないので、怖い顔のマヌケなオッサンと別の机で紛失届けの書類を作成。しかし小船は死ぬほど食べ始め、おまわりさんたちの晩ごはんが全部なくなるぐらいの勢いで食べまくっている! おまわりさんたち、ニコニコしながら「もっと食べなさい」といいつつ、心なしか顔がちょっと寂しそうに。自分のパスポートが日本のだった上に、小船もカタコトの日本語で対応していたので、おまわりさんたちも完全に日本人だと勘違いしている。

小船の食べっぷりに警官たちも大喜び!

おまわりさんたちの晩ごはんをあらかた食べ尽くした小船、「ありがとう、ありがとう。バリの警察は世界一だ」と、感謝しつつも適当なことを言いながら、カバンから食べかけの豆の袋をおもむろに出して、「お礼にこれをあげます」とか言いながら豆を振る舞う小船。晩ごはんがあらかたなくなったおまわりさんたちは、とりあえず豆に群がりみんなでムシャムシャ食べ始める。ヤバい! 浅草寺の鳩みたいだ!! 当然、日本の豆だと思っているおまわりさんたちも嬉しそうに「これはどこの豆なんだい?」と小船に尋ねると「中国の豆です」と答える。特別なもの以外は基本的に中国の食品をあげて喜ぶ人はあまりいないので、おまわりさんたちも「う〜ん、中国ね。いいね」などと、特に感想も言わずに食べるペースが若干落ちる。

日本で警察でご飯を食べるのは捕まった時だけだ

書類作成が超適当なのもいい。一番怖い顔のオッサンがカタコトの日本語で「ドコデ、ナクシマシタカ?」と聞くので、「ジャカルタです!」と、答えると、「う〜ん、ジャカルタねえ…」と、少し考える。おそらくジャカルタだとそっちに連絡したりと仕事が増えるから面倒っぽい。すると、突然「よし! バリにしよう! バリだよな!」と言い出した。いいねー、この仕事っぷり。日本の警官や公務員も見習ってほしい。あるいは、小船がものすごい勢いで自分のご飯を食べているので、早く書類を作成したい可能性もある。そして「時間はいつ?」というが、無くしたのは一昨日だけど、バリってことになるとつじつまが合わなくなる。…などと考えていると「よし、まあ1時間前だな。よし、そうしよう」などと自分でどんどん進め始める。中国の豆にすらありつけなくなったら一大事だ。

誕生日のおまわりさんと記念撮影。左は豆も食べ損ねた人

そして、聞けばその場にいたおまわりさんたちのうちの1人が誕生日。なるほど、そういうことか! それでみんなでご飯を食べるつもりだったようだ。ちなみに、食べ物は全部すごい美味しかった。バリの料理はおいしい! …と、小船氏。

この直後、小船の前に果物が直撃!

さて、バリの市内に向かい、みんなが泊まっている宿に到着すると、早くも大宴会に。バリ初日の上にジャカルタでは酒の入手が困難だったということもあり、やたら盛り上がる。すると、少しうるさかったようで、他の部屋のお客さんが突如謎の果物を二階から投げて来て、小船の前の机に落下! すると、さすが小船氏、怒っている人がいるとはったく気付かず「うわ〜、かわいい果物!」などと余計騒ぎ出した。ダメだこりゃ!