丁稚の小石が逃亡

高円寺をウロウロする丁稚の小石くん、3ヶ月の滞在期間を終え、ついに台湾へ帰国へ。

しかし小石くん、ここ1ヶ月ぐらい毎日のように「もうすぐ帰らないと」「帰りたくない」とブツブツ言ってて、本当に帰りたくない様子。ああ、高円寺や東京が気に入ってくれて、こちらとしては嬉しい限り。ビザや国境の関係がなければいつまででも飽きるまでいられるのにね〜。ま、金の問題はあるけど。

貧乏すぎて食パンとペヤングにマヨネーズで食べる小石くん。しかし当人はうまいうまいと大喜び

 確かに小石くん、日本に来てからライブ見に行ったりレコード屋まわったり、飲み歩きながら友達作りまくったりして、相当充実してる様子。う〜ん、高円寺楽しんでるね〜

ほぼ毎日のようにラーメン屋の「せい家」に行きたがる。写真は同じく台湾出身で高円寺在住の姉貴分のユミ姐さんと

台湾人が観光で滞在できるのは90日間。ということで、泣いても笑っても1月4日には日本を出国しないといけない、ということでギリギリの新年の4日にマヌケ宿泊所も満期出所。いや〜、ゲストハウスの掃除とかも手伝ってくれたり、いろいろありがとう小石くん〜

マヌケゲストハウスのリビングにて

ということで、前夜の1月3日に送別会を開くことに! 「小石くん送別会」と称して、飲み会を開催。20人ぐらいは集まっただろうか、みんな小石くんとの別れを惜しみ朝まで飲む。近所のたこ焼き屋ののタコ順氏などはわざわざ小石くんのために「小石送別歌」を熱唱。いやー、みんな心がこもってるね。

涙を呼ぶ寄せ書きの色紙。普通は観光で遊びにきた人にまでは送らない

そして、小石くんのために寄せ書きまで!

しかしどうもおかしいと思わないのだろうか、小石くん。いくら長めとはいえ、観光で遊びに来てて、帰るだけで何故ここまで大げさに!? 送別会はまだやったとしても、寄せ書きまで送る? 観光の人に!? 先日には復刊した『週刊素人の乱』の一面トップにまでなって報じられていた。なんか、あやしいんじゃない? …と、そう気づいたあなた、鋭い!

そう、我々高円寺のバカどもがそんな青春みたいに純粋な気持ちで送るわけがない。当然秘密の計画があるのだ。残念だったな、小石くん。そう簡単に高円寺バカ地獄から抜け出せると思ったら大間違いなのだ。ワッハッハ…!!! おまえの人生はもう終わりだ!

とりあえず、こちらを見てもらいたい↓

小石のパスポートをこっそり奪って勝手に購入したチケット

そう! 1月5日早朝の台湾から東京の飛行機のチケット。つまり、小石くんが台湾に帰った直後に、また飛行機に乗って日本に来ないといけないのだ。残念だったな、小石くん。君は桃園空港からは一歩も出られず、ましてや台北の地など踏むことはできないのだ〜!!

ここしばらく、あまりにも「帰りたくない」と、方々で言いまくっているので、それとなく「台湾帰ってなにするの?」「仕事は?」「なにか用事あるの?」などと、高円寺のみんなで聞きまくってみても「一切ない」という。さすがにどうしても外せない用事などがあるのなら無理は言えないけど、帰国後の予定は本当に一切ないという。よ〜し、そういうことならば餌食になってもらおうか。高円寺界隈のロクでもないやつらみんなでもくろみ、チケットを帰りの空港で渡し、高円寺に召還する秘密計画。送別会も新聞も寄せ書きも全部演出なのだ! ヒマ人の恐ろしさがわかったか!

約3万円。正月だからやたら高い。くだらないネタのための3万ならしかたがないと、涙を飲んで苦渋の購入

という秘密計画が地下で進行し、何も知らない小石くんは「ああ、あと1週間で帰らないと!」「もうあと4日しかない!」などと悲しむ日々。ということで、「もう二度と会えないかもしれない小石くん」という演出をするために、みんな頭をひねる。まずは週刊素人の乱で帰国決定の第一報を北中通り商店街一帯に報じ、そして再び帰ってきたときの気まずさを増幅させるために送別会をやったり寄せ書きを集めたりする! これは準備周到だ。「小石送別歌」まで歌って、別れの感動も呼ぶ。

どうだ参ったか!!!! 高円寺の大人たちが本気を出したら丁稚の小石くんなど赤子の手をひねるようなものなのだ!!!!! 勝負あった!!!

さて、あとはみんなで朝まで飲んで成田空港まで送ろう! しかし、ここまで手厚く送られてひとつも怪しいと思わないところが小石くんの小石たる所以。

前出のユミ姐さん(左)と、四六時中一緒に遊んでたシンくん(右)

第2部 小石の逆襲

空港でも「帰りたくない」「悲しい〜」を連呼する小石くん。こっちもわざと「もうしばらく会えないね〜」と言うと、何も知らずに「必ずすぐ帰ってくるよ!」と言う小石くん。マヌケすぎる。そして、いよいよ出国の直前、送りに行ったみんなで「これ、高円寺のみんなからの気持ちだから、受け取ってくれ!」と、封筒を渡す。開ける小石!

「…偽物でしょ」

全く信じてない。ちがうちがう! 本物だよ! と言っても「まさか」と取り合わないどころか「また夏頃には来るよ」とか言ってる。それ、明日のチケットだって!!!! で、そうこうしているうちに出国の列は進み「それじゃあまた!」と、出国ゲートの方に消えていった。おーい、俺たちの三万円はどこへいくんだ!

結局、飛行機が台湾に到着するまでに、日台のいろんな友人たちが「そのチケット本物だよ!」と、連絡しまくって、ようやく本人も「ギャー、本物なのか!」と気付く。

ところが、ここからが台湾PUNK小石くんの大物なところ。「無理だな」と、一瞬でそのチケットを捨ててしまい、そのまま実家に帰ってしまった。こら〜! おまえ何の用事もないっていってたじゃないか〜!!! してやられた〜!! 高円寺のみんなのここ一週間の極秘計画はどうなる〜!!

そして、翌日高円寺にも衝撃が走る。全員が翌日帰ってくると思ってたので、「あれ、今日帰ってくるんじゃなかったの? チケット捨てた!?」と、みんな驚く。そして意気消沈! 新春早々のめでたい時なので、まんまと戻ってきて「台湾帰れねえじゃねーか!」という、正月の締めのくだらないオチが美しいところだったが、甘かった!!! やられた!!! 小石が一番大人だった!

ということで、小石くん、また懲りずに遊びにきてね〜

はからずもこれが高円寺での最後の姿となった